藤本賞受賞、『ビリギャル』や『バクマン。』のプロデューサーが製作苦労話を吐露
映画製作者の功績を称える第35回藤本賞授賞式が、6月17日にパレスホテル東京で開催。「藤本賞」には『映画 ビリギャル』(15)の製作陣が輝いた。同作の那須田淳プロデューサーは「当時、『受験の話なんて、みんな観に行くのかよ』と、手厳しい先輩にかなり言われました。ヒットさせる自信はあったけど、悩みがつきなかったり心が揺らいだりしました」と、製作の苦労話を述懐した。
藤本賞は『映画 ビリギャル』製作の那須田淳、進藤淳一が、特別賞は『海街diary』(15)製作の松崎薫と、『バクマン。』(15)製作の川村元気が、奨励賞は『恋人たち』(15)製作の深田誠剛、小野仁史が受賞した。
那須田プロデューサーは、主演の有村架純をはじめ、キャストやスタッフ陣に感謝してから、土井裕泰監督についてのエピソードを披露。「夢や願いは口に出さないと叶わない。土井監督は『ストロボ・エッジ』(15)や『暗殺教室』(15)を超えたいと口に出して言われていましたが、それはすごく大事なことだなと。そして、素晴らしい賞をいただきました。次は、土井監督と、アカデミー賞の監督賞や作品賞を目指していきたいです」と力強く宣言した。
『海街diary』の松崎プロデューサーは「非常に幸運が重なりました」と、原作権を得たタイミングや、綾瀬はるから四姉妹のキャスティング、舞台のとなった鎌倉の家を借りて撮影できたことにふれた後、是枝裕和監督について「是枝さんとの出会いは大きなことで、稀有の体験を何度もさせていただきました」と、心から感謝した。
『バクマン。』の川村元気プロデューサーは大根仁監督を称えた。「僕は『マルサの女』が大好きで、仕事にまつわる映画を作りたいと思いました。そして、観終わった後は『キッズ・リターン』みたいに、夢敗れるけど、まだ始まってもいねえ、と終わるものをと。大根監督にそんなアバウトなお願いをしましたが、それを見事に脚本をまとめてくれました。エンタテインメントに徹した作品でこのような評価を受けられてうれしい限りです」。
『恋人たち』の深田プロデューサーは「このような小さい作品に光を当てていただき、うれしく思っています」と言った後、橋口亮輔監督をはじめ、キャストやスタッフ陣の名前を列挙し、感謝した。「一緒に苦労し、泣き笑いしてくれる人たちがいたからこそ、『恋人たち』は届いたのだと思います。そして素晴らしい体験ができたのは、すべて橋口監督のおかげです」と締めくくった。
藤本賞は、生涯で269作品を製作したプロデューサー藤本真澄氏の功績を讃えて設けられた賞で、毎年功績著しい活躍をした映画製作者を中心に表彰している。藤本賞には賞金50万円、特別賞、奨励賞には賞金30万円並びに各賞に対し副賞が贈られる。【取材・文/山崎伸子】