『ファインディング・ドリー』監督が語る誕生秘話

インタビュー

『ファインディング・ドリー』監督が語る誕生秘話

大ヒット作『ファインディング・ニモ』(03)に続き、続編『ファインディング・ドリー』(7月16日公開)を手掛けたアンドリュー・スタントン監督と、彼をサポートしたアンガス・マクレーン共同監督にインタビュー。最近はプロデューサー業をメインに活動していたスタントン監督だが、『ウォーリー』(08)以来、8年ぶりにCGアニメ映画を監督したことについて「居心地の良い靴を久しぶりに履いた感じだ」と独特の言い回しで表現した。

共に監督を務めたマクレーン共同監督は「彼が保安官で自分は副保安官だった」と役割分担について語る。「僕は、当初から彼のビジョンを支えてきたし、彼がいない時は手助けもしたし、クリエイティブな面でもいろいろと提案させてもらったよ」。

スタントン監督は、続編を手掛けた理由についてこう述べた。「2012年に久しぶりに『ファインディング・ニモ』を3Dで観た時、この話は終わってないと思ったんだ。ドリーは家族を見つけられなくて、心にぽっかりと穴が空いてしまったのではないか、もしかしたらこの先ニモやマーリンとも離れてしまうのではないかと考えてしまった。前作でドリーに心の平穏を与えられなかったから、続編で与えたいと思ったよ」。

本作では、カクレクマノミのマーリンが、ナンヨウハギのドリーと共に、息子ニモを人間界から救出してから1年後を描く。何でもすぐに忘れてしまうドリーだが、唯一忘れなかった家族を捜すため、ニモやマーリンたちと冒険の旅に出る。

ドリーについては『ファインディング・ニモ』の頃から細かいキャラクター設定がされていたというスタントン監督。「幼少期に1人さまよっていた過去があるからこそ、ドリーは他の魚と出会った時、できるだけ自分と仲良く時間を過ごしてもらおうとして、フレンドリーに接するんだ。それは彼女が自分を守る方法であり、そうすることでひとりぼっちになる時間を少なくしようとしたんだろう」。

今回いちばん試行錯誤したのは、ドリーがオーストラリアのグレートバリアリーフからアメリカのカリフォルニア沿岸まで、10,000kmもの距離を移動する過程をどう描くかだった。スタントン監督は「ドリーたちが海を渡るのに、映画の半分の尺を使ってしまいそうだったから悩んだよ」と振り返る。

マクレーン監督も同様に頭を抱えたが、子どもたちとディズニーランドに行った時、クラッシュが出てくるアトラクション「タートル・トーク」の反響に感心し、クラッシュを再登場させることに決めた。「どういった形で、説得力をもたせられるのかと考えた時、クラッシュを使えば、簡単に海を渡れると思いついたんだ。クラッシュは、英語版ではアンドリューが声を当てているしね」。

また、ここ数年のディズニー映画では、『アナと雪の女王』(13)、『ズートピア』(公開中)や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)など、魅力的なヒロインが活躍する映画が大ヒットしている。『ファインディング・ドリー』も日本に先駆けて公開された全米では、アニメーション史上歴代ナンバー1のオープニング成績を樹立した。スタントン監督は特にそのことを意識したわけではないが、ドリーが主人公の物語になったことは、とても幸運だと思ったそうだ。「だからこそ、今回は共同脚本家にヴィクトリア・ストラウスを起用したんだ。そして、今後ももっと女性を主人公にした映画は増えていくべきだと思っている」。

いよいよ今週末から公開される『ファインディング・ドリー』。前作『ファインディング・ニモ』が、ディズニー/ピクサー映画としては、日本でも歴代興収ナンバー1の大ヒット作だっただけに、期待をかけずにはいられない。是非、劇場へ行って、ドリーたちに再会して。【取材・文/山崎伸子】

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