室井滋と木梨憲武が感動した『ファインディング・ドリー』の深いメッセージ

インタビュー

室井滋と木梨憲武が感動した『ファインディング・ドリー』の深いメッセージ

大ヒット作『ファインディング・ニモ』(03)の続編『ファインディング・ドリー』(7月16日公開)で、ドリー役とニモの父・マーリン役の声優を務めた室井滋と木梨憲武。日本に先駆けて公開された全米では、アニメーション史上歴代ナンバー1のオープニング成績を樹立した話題作だけに、日本公開にも期待がかかる。室井と木梨にインタビューし、アフレコの苦労話や本作に込められたメッセージについて話を聞いた。

『ファインディング・ドリー』は、カクレクマノミのマーリンがナンヨウハギのドリーと共に、息子ニモを人間界から救出してから1年後の物語だ。何でもすぐに忘れてしまうドリーが、唯一忘れなかった家族を捜すため、ニモやマーリンたちと冒険の旅に出る。

室井は現在、絵本のトークライブイベントを定期的に行っていて、前作の時に比べて何通りもの声色を出せるようになったが、その分、ドリー役のアフレコでは苦戦を強いられた。「私は日頃、(絵本を読む時)赤ちゃんからおじいさん、おばあさんの声まで出しているので、1つ間違えるとドリーじゃなくなっちゃうんです。また、今回ベビードリーやドリーの少女時代もやる気満々でしたが、『それはやめてください』と言われて、ガビーンとなりました(笑)」。

ドリー役を演じるにあたり、室井がお手本にしたのは、英語版エレン・デジェネレスの声だった。「私は日本を代表してドリー役をやらせてもらっているので、私なりのドリーをお見せしたいという欲が出ちゃうけど、それはダメかもしれないなと思いました。ただ、途中で何度も悩んだし、あくまでも本国の声を大事にするということで、そこはちょっと辛かったけど、その分、正確にやろうということで集中はできました」。

木梨も「僕も全く同じです」と同意する。「室井さんと同じように、余計なことを考えずに、マーリンとしてしゃべろうというのではなくて、アメリカの人の声をまず聞いて、そのニュアンスに合わせてやっていきました」。

木梨は、室井と一緒に取材を受けていたら、室井がドリーに見えてきたと笑う。「室井さんは声だけでなく、性格もドリー化しています。この間も楽屋から取材部屋に行く時に、『あれ?どっちだっけ?こっち?あった!』と、全部自分で収めていった。その後ろ姿を見た時、室井さんじゃなくてドリーだと思いました(笑)」。

室井は「確かにおかしくなっているかも」と大笑い。「忘れ物がひどくなって来ました。先日も、タクシーの中に携帯を忘れて大騒ぎになってしまったし。でも、忘れ物をしてもあまり気にならないというか、別にいいやと思えたりするのも“ドリー現象”だなと思います。ドリーのそういうあっけらかんとしたところが素敵だなと思うし、そう思えたら楽だろうなと」。

今回、ドリーが旅先で迷い込むのは、病気やケガをした海の生き物を保護する水族館のような海洋生物研究所だ。生まれつき片方のヒレが小さいニモや、忘れんぼうのドリー、新キャラである7本足のタコ・ハンク、目が悪くて泳ぎが苦手なジンベエザメ・デスティニーなど、本作には完ぺきではないキャラクターたちが多数登場する。

木梨は「仲間がいれば大丈夫だということですね」と微笑む。「家族だったり友だちだったり、仕事のスタッフもそう。やっぱり自分のことが自分でいちばんわからなかったりするんです。僕だってこの歳(54歳)になってもそう思うし、子どもたちも人のことの方がよくわかっている気がするし。鈍いところは仲間が助けてくれたり、アドバイスをくれたりする。まさに同じ気持ちですね」。

室井もドリーを取り巻く環境が素晴らしいと言う。「今回、魚がいっぱい出てきますが、ドリーが忘れっぽいことをみんなが笑いながらも楽しくやっているのがいいですね。それをハンデと言っちゃったりすると、ハンデになってしまい、こそこそしちゃうんですが、堂々としていたら、その人の妙なところが面白くて、人気者になっちゃったりもする。欠点だと思っているところが欠点じゃなくて、長所にもなりえるのかなと思います」。

室井と木梨の名(迷)コンビはもちろん、ハンク役の上川隆也や、デスティニー役の中村アン、海洋生物研究所のアナウンスを務めた八代亜紀など、日本語吹替版にも豪華なボイスキャストが参加した『ファインディング・ドリー』。丁寧につむがれた友情や親子愛の物語はもちろん、スケールアップした海の中の映像も圧巻なので、大いに期待して。【取材・文/山崎伸子】

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