『Wの悲劇』監督、薬師丸ひろ子を「女優を続けるしかない状況に追い込んだ」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『Wの悲劇』監督、薬師丸ひろ子を「女優を続けるしかない状況に追い込んだ」

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『Wの悲劇』監督、薬師丸ひろ子を「女優を続けるしかない状況に追い込んだ」

角川映画作品48本を上映する角川映画祭が7月30日に開幕。開催を記念した舞台挨拶が7月31日、角川シネマ新宿で行われ、三田佳子、澤井信一郎監督が登壇した。澤井監督は『Wの悲劇』(84)で主演を務めた、当時20歳の薬師丸ひろ子を女優として生きていく道を作り出したきっかけを語った。

同作は、女優を目指す若い劇団の研究生が、ある事件に巻き込まれて主役を演じ、本当の女優になっていく姿を描いている。夏樹静子原作の同名小説を、本編の中の舞台劇に折り込んだ撮影手法が斬新だ。

その作品の上映後の舞台挨拶となり、三田は「32年も経って申し訳ないような気がします。スクリーンのまだムンムンしている雰囲気がなくなちゃって、ここに登壇して(観客が)がっかりしちゃうのではないかな」と会場を見渡した。

公開当時の反響を振り返り、澤井監督は「大ヒットで席がないというのはよく覚えている。新宿武蔵野館では劇場の調査で99.8%がおもしろかったと出て、これは新記録だと喜んだ。お客さんが入ってくださるのもうれしいですけど、満足度が高い方がもっとうれしいと、祝杯をあげた」と監督冥利に尽きる表情を浮かべた。

薬師丸を大女優に育てあげるという役どころを演じていた三田は「大女優の役は嫌だな、よくあるパターンで、そんなの今さら、“大女優です”って顔して出ていきたくないわ」と当時の心境を明かすと、会場は笑いに包まれる。続けて、「若い新人女優と大先輩の大女優と言われているふたりの役者が、拮抗して戦うという、ただのアイドル映画として使っていただけます?と。もちろんだよと言ってくださって」と、オファーを受けたきっかけを語った。

年月が経ってから自身の出演作を観るのは「恥ずかしい」という三田。周囲から同作について、「“すごい映画だ、観てみたら?”と言われて、ちょっと見たの。そしたら、本っ当にすごいんですよ!ビックリしました!」と興奮し、「こんな自分がいたんだと。もう二度とできない。あれ(『Wの悲劇』)が原因で宮藤官九郎さんが『淫獣』という舞台をもってきて。“大女優と言えば三田佳子以外いないよ”と、マツコ・デラックスさんが三田佳子というものを凝り固めている」と、うれしそうな表情をのぞかせた。

薬師丸の起用を澤井監督は「この子(薬師丸)は大学2年か3年生で大学にこもってしまうかもしれない。選択肢はいっぱいあるんだから、この子ととことん演技で付き合ってみて“もう逃れられない”と、扉を閉めちゃうつもりでいた」と、“女優を続けるしかない”という状況に薬師丸を追い込んだという。

そんな薬師丸の印象を三田は「かわいいけれど、芯がありました。監督が追い込んだのかもしれないけれど、それが始まりかもしれないけれど、32年経っても女優というものをやり続ける彼女の神髄が感じられた」と明かした。

当時、20歳だった薬師丸から「三田さん、これもらってください!あげます」とブロマイドを渡されたとも。「当時のアイドル、そういう世間を知らない…。わ!と思ったけど、“うれしいわ、どうもありがとう”と(受け取った)。30何年持ってます」と微笑ましいエピソードを披露した。

角川映画誕生から40年。同映画祭では、1976年の第一弾『犬神家の一族』に始まり、昭和時代終了となる1988年の宮沢りえ映画デビュー作『ぼくらの七日間戦争』までが一挙に上映される。9月2日(金)まで開催。【Movie Walker】

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