生田斗真、『秘密 THE TOP SECRET』の新鋭・織田梨沙を語る
『るろうに剣心』の大友啓史監督最新作『秘密 THE TOP SECRET』(8月6日公開)で、主演を務めた生田斗真にインタビュー。彼が演じたのは、被害者の脳をスキャンして生前の記憶を映像化し、迷宮入り事件の解決を図る警察庁の特殊脳内捜査チーム、通称“第九”の室長役だ。頭脳明晰かつ沈着冷静でカリスマ性があり、女性と見紛うほど見目麗しい指揮官である。生田は浮世離れした主人公・薪剛役にどうアプローチをしていったのか?
生田にとって本作に出演することは、大きなチャレンジだったと明かす。「人の上に立つ役というのはあまり経験がなかったので、まずは挑戦したことのないものに出会ったという印象がありました。また、全体像については、脳内で見たものを映像としてどんなふうに表現するのだろうと思いました」。
生田はまず、外見からキャラクターに寄せていったと言う。「僕は見た目から入るタイプの人間だから、衣装に袖を通したり、役の髪型を意識したりと、ビジュアル的なイメージから近づけていきました。また、薪さんは“はかなさ”や“もろさ”が魅力的なキャラクターだけど、彼が抱えている闇やトラウマ、怒りや悲しみなどは表に出せない役なので、これはちょっとしんどいだろうなと思いました」。
大友監督からは「美しく枯れた青年であってほしい」とリクエストされた。「薪はたくさんの秘密を抱え込みすぎて押し潰されそうになっている。周りの人間が触れにくい、ガラス細工でできたような人だし、時には色気も出たりするから、そういうふうにおっしゃったのかなと。また、カタプレキシーの発作が起こり、ぱたっと倒れるんですが、その倒れ方もきれいだったらいいなあと思いました。漫画でも、前髪がぱさっときれいに落ちるんです」。
薪は、新人捜査官・青木一行(岡田将生)らと共に、家族を惨殺した罪で死刑になった男の記憶をたどる。そこには行方不明になっていた男の娘・絹子(織田梨沙)が家族に刃物を向ける姿が映っていた。やがて事件の延長線上に、凶悪犯・貝沼清孝(吉川晃司)の存在が浮上する。
青木役の岡田将生とは、薪と青木さながらの信頼感が生まれていった。「気づかないうちにどこか役柄とリンクしていったのかもしれない。薪は元相棒で親友であった鈴木(松坂桃李)を自らの手で殺してしまい、その思いにずっと引っ張られながらも、前だけを見て進んでいこうとする。そのそばにいるのが青木で、現場でも岡田くんがいると安心できたり、精神的にもかなり寄り添っていた部分がありました。役について岡田くんと話すことはほとんどなかったけど、気持ちが通っていく感じでした」。
一連の事件のカギを握る絹子役に大抜擢されたのが、モデルとして活躍する織田梨沙だ。粗削りながらも、妖艶さとイノセントさが同居した怪演に思わず息を呑む。「お芝居は全然経験がない方だったけど、大友監督がゾッコンだったという印象でした。良い時と良くない時との差が激しいけど、爆発力がすごいと監督がよくおっしゃっていました。僕も織田さんには、好き勝手に暴れてほしい、自分のもっているキレキレの刀をぶんぶん振り回してほしいと思いました」。
そこには、織田たち新人を見守る温かい視線があったと話す。「少しおこがましいかもしれないけど、やっぱり現場が良い思い出であってほしいし、またお芝居をやりたい、映画に出てみたいと思える作品に出会ってほしいという思いがありました。僕らも彼女に刺激される部分がありましたし。僕らはすでに自分なりのやり方や手癖ができてしまっているから、絶対にそこへは戻れないという羨ましさもある。それでもそこを超えていかなきゃいけないというのは、俳優の宿命でもありますが」。
被害者の脳を覗くという行為については、生田自身、どう感じ取ったのか?「映画のなかでは、神の領域を侵してしまったと言っていますが、本当にただごとではないなあと思います。でも、実際に開発されてもおかしくないような時代に来ているそうなので、万が一そうなると、怖い世の中になるとも思いました。だから映画を観て、お客さんが話し合ったり、何かを感じて考えてもらえたりしたらうれしいです」。【取材・文/山崎伸子】