『オーバー・フェンス』山下敦弘監督がプレッシャーを告白!函館3部作の監督が集結
『海炭市叙景』(10)、『そこのみにて光輝く』(14)に続く佐藤泰志原作の函館3部作最終章『オーバー・フェンス』が9月17日より公開となる。8月27日、函館3部作が完結したことを記念してテアトル新宿で「函館3部作オールナイト上映」が行われ、熊切和嘉監督、呉美保監督、山下敦弘監督がトークショーに登壇。最終章のメガホンをとった山下監督が「プレッシャーが大きかった」と告白した。
函館出身で、その生涯において5度も芥川賞にノミネートされながら、受賞することなく逝った佐藤泰志。『オーバー・フェンス』は、彼にとって最後の芥川賞候補作となった作品で、作家活動に挫折しかけた時代に職業訓練校に通っていた自身の体験を基にした物語だ。
函館3部作を撮り上げたのは、大阪芸術大学出身という共通点を持つ3人。『オーバー・フェンス』の山下監督は、製作陣から「最終章をやりませんか。最高傑作を作りましょう」という呼びかけがあったそうで、「プレッシャーが大きかった。大阪芸大というよくわからないしばりもあって」と苦笑い。「ずっと(函館3部作の)撮影を担当していた近藤龍人が今回もやってくれるということで。やるしかないなと思った」とプレッシャーとともに、気を引き締めてタスキを受け取ったことを明かした。
函館3部作のスタートとなった『海炭市叙景』の熊切監督は、「広がりのある群像劇なのに、キャスト費がなくて」と述懐。「エピソードを削るのは嫌だったので、現地でオーディションをしたり、スカウトをした。苦労したけれど、今思えば映画を撮ってきて一番、楽しかった気もする」と試行錯誤した日々は、充実のものでもあったという。
「カリスマ!」と先輩でもある熊切監督への敬意を表したのが、呉監督。『そこのみにて光輝く』では「天候に恵まれず、晴れの絵が全然撮れなくて。ラストシーンだけは、ちゃんとした太陽を見たいと思っていた。長回しで、見事にラストシーンを撮れたのは奇跡」と名シーン秘話を明かしていた。
またこの日は、函館3部作すべてを見守った撮影監督の近藤龍人、照明の藤井勇、プロデューサーの星野秀樹も登壇。近藤は「まさか同じ街で、3本続けて撮ることになるとは思っていなかった。それぞれの作品で函館に行くたびに、自分の見方をちょっとずつ変えて臨んでいった。それは自分にとっても新しい経験だった」。藤井も「『海炭市叙景』が思い入れあるものとして出来上がったけれど、同じではいけないと思った。3つの映画、ちゃんと違う映画ができた」と感慨を語っていた。【取材・文/成田おり枝】