宮崎駿監督、『レッドタートル』に感激「このスタッフが欲しい」
構想10年、制作8年のスタジオジブリ最新作『レッドタートル ある島の物語』(9月17日公開)の完成報告会見が、9月1日にグランドハイアット東京で開催。来日したマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督と鈴木敏夫プロデューサーが登壇した。鈴木プロデューサーは、本作を観た宮崎駿監督の感想を代弁した。
マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督は、スタジオジブリとのコラボレーションはとても有意義だったと言う。「ジブリさんから最初に言われたことは『作家性のある作品を尊重します』ということでした。当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、すべての映画製作はそうではない。高畑さんも何事に対してもとても慎重に意見を言ってくれました」。
鈴木プロデューサーは宮崎監督の映画評を3つのポイントに分けて紹介した。「まずは、10年間、粘り強く頑張りましたねというねぎらいの言葉でした。くじけそうになっても最後までやり通したことが素晴らしいと。2つ目は、良い意味でも悪い意味でも、いま日本のアニメーションが世界のアニメーションにすごく影響を与えているが、あなたの作品を観るかぎり、日本の影響を一切受けてない。それが見事であると」。
続いて3つ目のポイントが興味深い。「うらやましかったんでしょうかね。素晴らしいスタッフと作品を作ってくれたと。いま、日本の状況は手書きのアニメーションからCGのアニメへの転換期を迎えている。ジブリもどうするか、厳しい選択を迫られているんですが、彼は『レッドタートル』を観ながら『このスタッフが欲しい。このスタッフがいるといいなと』と言っていた。もう(長編監督からは)引退したのに(苦笑)」。
さらに鈴木プロデューサーは「転換期だから、今後のジブリについてもいろんな対応策を考えないといけない。今後は流動的です。いろんなお話がありますので」と、模索中であることを明かした。
本作は、『岸辺のふたり』(00)で第73回アカデミー賞短編アニメ映画賞に輝いたマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督が、8年の年月を費やして完成させた長編初監督作だ。不思議な島にたどり着いた男が体験する出来事を、全編台詞なしで、美しい映像と音楽と共に描かれる。【取材・文/山崎伸子】