LGBTが自分らしく生きるためには?50代でのカミングアウトがもたらした希望

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LGBTが自分らしく生きるためには?50代でのカミングアウトがもたらした希望

映画『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』(11月26日公開)のトーク付き試写会が11月15日に明治大学で開催され、多様な人材を積極的に活用しようという“ダイバーシティ”に関するトークセッションが行われた。

本作は、同性同士のカップルの権利を訴えるべく戦った実在の女性、ローレル・へスターとステイシー・アンドレに迫った人間ドラマ。「日本のダイバーシティって何だろう?」と題されたトークには、明治大学准教授の田中洋美、明治大学政治経済学部の松岡宗嗣、世田谷区区議の上川あや、日本でのダイバーシティ推進活動の先駆である日本アイ・ビー・エムの川田篤、ダイバーシティ経営企業100選に選ばれたポーラの齋藤明子が登壇した。

上川区議は「トランスジェンダーです。27歳まで男性サラリーマンとして働き、性別をさまよって、30歳から女性として暮らすようになった」と自己紹介。

劇中のローレルは、職場でカミングアウトできないでいた人物だ。しかし、病になった後、遺族年金の申請を断られたことで、“いち市民としての平等”のために立ち上がる。上川区議は「社会制度上の性別を変えることが不可能だったため、戦う手段として政治家になった」と言う。「選挙を戦うなかで、親はどういう育て方をしたんだと言われて。泣きながら選挙を始めた」そうで、政治家として奮闘するなかで、「性別を変える法律もできた。社会は変わると実感した」こともあって、本作にもとても感銘を受けたと言う。

川田氏は「私自身はゲイです」と挨拶。社内では50代になってからカミングアウトをしたそうで、「自分にとってカミングアウトは、第二の成人式だった。初めて自分に向かい合えて、自分を受け入れて、本来の自分になれた。チャレンジでもあったし、変わることもできた」とカミングアウトの重要性について話す。

川田氏がカミングアウトを決意したのは、会社で働く上で、「部下にもっと頑張れと発破をかけながら、一方では自分をさらけ出していないことに罪悪感を感じた」からだと言う。社内ミーティングでカミングアウトをしたところ、全員が拍手をし、スタンディングオーベションまであったとか。

LGBTが社会で理解されるためには、「人と人との関係が重要。その人に寄り添えるかが問われている。人間性の問題」と話した川田氏。「価値観が多様化してきている。“多数=正しい”というわけではない。一人一人が違っていいし、声を上げていいし、声を上げなければいけない。世の中を変えていくのは我々自身」と力強く語ると、齋藤氏も「これからは寄り添ったり、助け合ったりする社会になっていく」とコメント。

もちろん多様化が進めば、引いてしまう保守的な人もいるが、学生の松岡氏も「いろんな違いに対して、理解をすることはできないのは当然。でも味方でいることはできる」と述べるなど、深い議論に発展。勇気を与えるような言葉の数々に会場からも拍手が上がっていた。【取材・文/成田おり枝】

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