『渇き。』が導いたハリウッドデビュー。小松菜奈、「負けちゃいけない!」と実力主義を実感

インタビュー

『渇き。』が導いたハリウッドデビュー。小松菜奈、「負けちゃいけない!」と実力主義を実感

女優・小松菜奈がマーティン・スコセッシ監督が遠藤周作の小説を映画化する『沈黙ーサイレンスー』(1月21日公開)でハリウッドデビューを果たした。オーディションを経て、若くして夢のようなチャンスを手にした彼女を直撃。実力主義というハリウッドの現場、スコセッシ監督と過ごした贅沢な時間について語ってもらった。

本作は、キリシタン弾圧下の長崎を舞台に、ポルトガルからやって来た若き司祭が目撃する日本人信者の苦難や葛藤を通して、人間の心に深く迫る歴史大作。小松は、厳しい弾圧を受ける隠れキリシタンの女性・モニカ役を演じている。

ハリウッドデビューという輝かしい道のりへ導いてくれたのは、本格的な演技に初挑戦した『渇き。』(14)だった。「『渇き。』のプロデューサーさんが、『オーディションがあるから受けてみない』と声をかけてくださって。セリフは全編英語ですし、英語が話せないと無理なんじゃないかと思ったので、オーディションを受けるのにも正直自信がありませんでした。でも『せっかくのチャンスだし、とにかく受けることに意味がある』と思って」と思い切って、飛び込んだ。

ビデオオーディションでは「いろいろな表情。怒ってみたり、笑ってみたり、泣いてみたり。セリフの英語も、事前に先生についていただいて発音などを勉強しました」と奮闘。見事に合格の報を受けた時は「嘘でしょう!?」と驚いたそう。

演じたモニカという女性については、「芯のある子で、社交的で明るくて。自分の信じているものを貫こうとする女の子」と分析。加瀬亮演じるジュアンの妻という役どころでもあるが、「撮影当時、私はまだ19歳だったので、奥さん役に挑むのに戸惑いました。加瀬さんとは、『夫婦です』とあからさまに見せるのではなくて、『アイコンタクトで、目で会話するような感じもいいかも』といろいろとお話をして、夫婦像を作っていきました」。

ハリウッドという憧れの舞台で、しかも監督はマーティン・スコセッシ。小松は「監督は早口なんですが、すごく優しいんです」とお茶目な笑顔をのぞかせつつ、スコセッシ監督の懐の深さに感謝しきりだ。「国によって役者さんの演技も違うと思いますが、『僕は日本人の繊細な演技が好きなんだ』と言ってくださって。日本人の演技のよさというものを、すごく大事にしてくださいました」。

実際の演出は、「まずは『自由にやってみて』と、自由にやらせてくれます。そしてそれを否定をせずに、『それもすごくいいね。これもちょっとやってみようか』と。ワンシーンワンシーンをすごく大事に撮っていて、同じシーンを30テイク撮ることもあります」と丁寧に、妥協を許さない姿勢だったとか。「1日に2シーンしか撮れない時もあるんです。いつ自分のシーンを撮るかわからないので、みんな小さな携帯電話を支給されて、連絡が来たらすぐに駆けつける。1か月半の撮影期間のうち、私の出番としては1か月はお休みになるんです。でも、いつ呼ばれるかわからないし、役柄的に太ってはいけないので、あまり食べられない。ずっと緊張感が続いている状態でした」。

日本の撮影とはまったく違う環境だったようだが、もう一つ実感したのが「実力主義」ということだ。「いい芝居をしていないと撮ってくれないし、いい芝居をすればきちんと撮ってくれる。日本では、このシーンは“寄り”で撮る、“引き”で撮るなど事前に決まっていますが、今回の現場はそうではなくて、“寄り”だと思っていたら、“引き”になっていることもある。だから“寄り”をもらえればみんなすごく喜ぶし、そのために頑張るんです。自分を撮ってくれるということが、『当たり前じゃないんだな』とすごく感じました。私ももっと出て行かないといけないと思いましたし、負けちゃいけないんだと思いました」。

アンドリュー・ガーフィールドとアダム・ドライバーが若き司祭役として参戦。日本からは、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也ら個性と実力を兼ね備えた強力キャスト陣が集結した本作。周囲の役者陣とも話す機会が多かったそうで、「どういう気持ちでこのオーディションに参加したのかなど、みなさんの役者魂や本音を伺うこともできました。素敵な先輩たちの演技をまじまじと見て、生で感じられるというのもすごく貴重な体験。いい役者さんのお芝居を見るのはとっても刺激的です」と本作で得たものは限りない。小松菜奈のハリウッドデビューを是非ともスクリーンで堪能してほしい。【取材・文/成田おり枝】

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