阿部寛&天海祐希&遊川和彦監督が明かす、連ドラ主演をやり続ける難しさ
役者として第一線をひた走る阿部寛と天海祐希が、映画『恋妻家宮本』(1月28日公開)で夫婦役として共演する。ドラマや映画などで、がっつりとタッグを組むのは実に15年ぶりのことと言うが、ささいなすれ違いに戸惑い、悩む、愛らしい50代の夫婦を抜群のコンビネーションで体現している。阿部&天海、そして遊川和彦監督を直撃し、50代という時期の生き方について話を聞いた。
本作の主人公は、子どもが巣立ち二人きりとなった宮本夫婦。ある日、夫は妻の隠し持っていた離婚届を発見してしまい、悶々とした日々を過ごすことに。次第にお互いの内なる思いが明らかとなる可笑しくも温かな夫婦の物語だ。気鋭の脚本家として知られる遊川和彦が、自らの脚本で映画監督デビューしたことでも話題だ。
ウジウジと悩む夫と、何事もテキパキと決めてしまう妻。彼らのやり取りが絶妙で、大いに笑わせられながらも、次第に50代を迎えた夫婦の“リアル”が浮き彫りとなってくる。阿部と天海に夫婦役として共演した感想を聞くと、お互いへの並々ならぬシンパシーを明かした。
阿部「ずっと天海さんのことは見ていました。同じような境遇で仕事をしていると思っていて、ずっと気になる存在でした。例えば、お互いに連ドラで主演をやらせていただく機会があったり、わかり合えることがあるわけで。CMでご一緒させていただいた時にも、いろいろなお話をさせていただいて、考え方が似ているなと思っていたんです。なので、天海さんとの共演はものすごくやりやすかったです」。
天海「阿部さんは、私が映像のお仕事をやらせていただいたはじめの頃に、ご一緒させていただいたことがあって。阿部さんにお会いすると、初心に戻れるような気がするんです。まだ何も知らない頃の自分を知ってくれているわけですから。私よりちょっとお兄さんで、たくさんの経験をしてきていらっしゃる。もし私が悩んでいて相談をしても、的確な答えをくれるだろうなと思える先輩なんです」。
いつまでも堂々と“連続ドラマの主演”を張る二人だが、天海からはこんな素直な言葉も。
天海「やっぱり、40代後半や50代になってくると、連ドラの主演って難しくなってくるんですよね。どんどん勢いのある若い方たちが出てくるなかで、私たちがやらせていただけるのはものすごくありがたいこと。阿部さんが数歩先を歩いてくれていると思うと、私も頑張らなきゃと思います」。
遊川監督「連ドラは体力的にも精神的にもしんどいと思いますよ。終わりがなかなか見えないものの真ん中を任されて、周りのことも見なきゃいけない。このお二人は本当に稀有な二人で、選ばれし二人です」。
50代という、人生の岐路が描かれる本作。これまでの自分の人生を振り返り、結婚生活についても改めて、その意味を考える時期かもしれない。60歳にして映画監督デビューした遊川監督にとっては、50代というのはどんな時期だっただろうか?
遊川監督「僕は50代のときに、『60歳までに遊川和彦という人間は大人になる』と宣言したんです。いつになったら大人になるんだろうと思っていたけれど、40代になっても、50代になってもどうやらまだ大人じゃない。でも60歳になったら、もういい加減にしろ!という話なので(笑)。60代は熟成した人間として、最高傑作を作っていくと決めたんです。そう考えると50代は、60歳になってちゃんと自分の仕事に対して胸を張れるようにするための勉強期間。最終勉強時期だったと思います」。
「まだまだ50代は未熟で未完成」と話す遊川監督。これからがまさに「最高傑作を作っていく時期」と言い、衰えぬ創作意欲には驚くばかり。これには阿部も天海もビシビシと刺激を受けていた。
阿部「昨年お亡くなりになってしまいましたが、蜷川幸雄さんもそうでした。まだまだやり残したことがあるし、まだまだやるつもりだったと思います。車椅子に乗っても仕事をされていました。僕や若い役者さんもずっとそんな蜷川さんを求めて、歩んできたわけです。遊川さんにもいつまでも、その情熱を貫き通してほしい」。
天海「情熱を燃やし続けるって、本当に大変なことですよね。そういった先輩方がいると、ものすごく刺激になります。今回で言うと、富司(純子)さんも素晴らしかった!理想のお手本を見せてくださいました。阿部さんも、応援したくなるような工場の社長をやったり、古代ローマに行ったり(笑)。そして今回は気持ちの小さな、小さな男の人を演じていて(笑)。いつもものすごい振り幅を見せてくださいます。監督や阿部さん、富司さんなど輝いている方を見ると、私なんてまだまだ!頑張らなきゃ!」。【取材・文/成田おり枝 撮影/ YOONCHONGSOO】