ダニエル・ダリュー
Lydia
「暁に帰る」「巴里の評判女」に先んじてフランスで製作されたダニエル・ダリュー主演映画で、「暁に帰る」の脚色に参与したピエール・ヴォルフが書卸し、「暁に帰る」のアンリ・ドコアンが「不良青年」のジャン・ボワイエと協力脚色し、自ら監督に当たったものである。撮影は「暁に帰る」「美しき青春」のレオンス・H・ビュレル、作曲は「みどりの園」「恋愛交叉点」のジョルジュ・ヴァン・パリス、装置はギイ・ド・ガスチーヌが、それぞれ担当している。ダリュウと共に「禁男の家」のヴァランティーヌ・テシエ、「南方飛行」「レ・ミゼラブル」三部曲のシャルル・ヴァネルが主役を勤め、「はだかの女王」のイヴェット・ルボン、「暁に帰る」のピエール・マンガン、「沐浴」「旅順港」のジャン・ウォルムス、「望郷(1937)」のジルベール・ジル及びルネ・ベルジュロン、舞台のテレーズ・ドルニー、スヴェトラナ・ピトエフ等が助演している。
年若く美しい法科大学生リディアにとって、唯一の肉親である祖母の急死は、余りにも大きな心の傷手であったが、その上彼女は次の日から生活の為に闘わなければならかった。下宿の亭主は僅かばかりの宿料を楯に、淫らな欲望さえ彼女へ向けた。職を求めて空しく彷徨し、疲れと空腹に苦しめられたリディアに、学友のアリスは無謀な提案をした。古物商をしているアリスの父親が買った古本の中に、色褪せた一冊のアルバムがあった。それは二十年前に自殺した無名女優の写真帖で、赤ん坊を抱いた彼女の写真が貼ってあり、傍らに記された文字によると、彼女と嬰児を捨てて去った男に対する深い思慕が述べてあった。彼女は死んだ赤ん坊の後を追って自殺したのである。相手の男はジャック・フェルネエと言う。彼はヴェルサイユに豪奢な邸宅を持ち、妻エレーヌの愛情の許に、若い秘書ピエールを使って学究にその日を送る著名な歴史家である。捨てられた嬰児になって彼の所へ行けとアリスはリディアに勧めた。この恐ろしい企みに、勿論リディアは同意しなかったが、其の後の就職も無駄に終わった彼女は遂にアルバムから写真だけを切り取ってフェルネエの許を訪れた。彼は若き日の記憶に胸をしめつれられる思いだった。ここに居るのは自分の子供であると彼は信じたが、再会を約して別れたリディアは、恐ろしい背信の罪と、どこへ行っても淫らな欲望より外に見出せない世間と闘う決意に疲れ、遂に行き倒れて病院へ運ばれた。フェルネエは子供に逢いたい一念でリディアの下宿を訪れたが、彼女は三日も家へ帰らないと聞き、ピエールに命じて警察の手を通じ、病院に居る彼女を探し出した。そして昔の罪を妻に打ち明け、その許しを得てリディアを家へ引きとる事になった。こうしてリディアは不自由のない毎日を送った。フェルネエは心から彼女を愛し、ピエールは恋心さえ抱いたが、恐ろしい背信を思えば一日も安からな日はなかった。その態度に不審を抱いた夫人は、アリスを責めて遂に真相を知ったのである。それは学校を卒えたリディアが、初めて弁護士として法廷に立つ機会が與えられた時だった。しかも彼女が弁護するのは、自分と同じ道を通って、一人の夫人を偽った娘である。それは自分自身を弁護することだ。声涙共に下る彼女の叫びで、少女は無罪になったけれど、リディアは今こそ自分の偽りを告白しなければならないと思った。家へ帰って荷造りをしている彼女の前へ現れたのは夫人である。泣いて告白するリディアに、夫人は「何もかも知っています。しかしもう遅いのです。貴方はフェルネエやピエールのものです」と言いながら、優しく彼女を抱くのであった。
Lydia
Jacques Ferney
Helene Ferney
Alice
Pierre Montanet
Paul
Le President du tribunal des enfants
La Logeuse
Renee Leclerc
La Gamine
Dieulafoy
La Patron de I'hotel
Me Fortier
Le valet de chambre
L'homme du cimetiere
La postulante
La patronne de la gargote
Le mari
監督、脚色
原作、台詞
製作
撮影
音楽
音楽監督
セット
脚色
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