HBO Maxがスタート!DCコミック作品、ハリー・ポッター、ジブリ作品が揃い踏み
5月27日から、ワーナーグループのストリーミング・サービス、HBO Maxが始まった。始まったといっても、実際には27日未明にすでにサービスを行っていたHBO NowのアプリがアップデートされるとHBO Maxに変わっていて、元々のユーザーにとっては観られる作品が増えたくらいの感覚でしかない。
金額もHBO Nowと同じ月額14.99ドルで、初めてHBO系列のサービスに入会する会員には、1年間11.99ドルで視聴できるキャンペーンを行っていた。また、HBO Maxを展開するワーナーメディアの親会社は通信大手のAT&Tで、インターネット接続サービスや携帯電話を契約している顧客には従来の契約のまま使えるプランがある。
HBO Maxにはワーナーメディア傘下のワーナー映画やニューライン・シネマ、カトゥーン・ネットワーク、クランチロールなどのコンテンツに加え、スタジオジブリと作品配信の包括契約を結んだことが話題になった。HBO MaxのCCO(コンテンツ最高責任者)のケビン・ライリー氏はNYタイムズのインタビューで、業界内外からの反響が小さくなかったことを認め、「(スタジオジブリとの契約によって)このサービスが何を目指し、どんなものを世に出していくのかの指針となった。
「サウス・パーク」の配信の契約を結んだ際にはトレイ・パーカーとマット・ストーンに、‟ジブリを連れて来てくれたことは、僕らにとって本当に大きな意味があるんだよ”と言われたんだ」と明かしている。アニメーションではジブリ作品のほかにも、クランチロールのライブラリーから「映像研には手を出すな!」や「鋼の錬金術師」、アダルト・スイムの作品も揃っている。また、歴代ゴジラシリーズや黒澤明監督、小津安二郎監督といった邦画の名作もある。
ワーナー映画のラインナップでは、「ハリー・ポッター」の全8作品が揃い、DCコミック作品もワーナー映画、HBO作品を縦断して揃う。『ジョーカー』(19)のコレクションにはジャック・ニコルソンがジョーカーを演じた1989年の『バットマン』や『スーサイド・スクワッド』(16)が並び、HBOのドラマシリーズ「ウォッチメン」、『シャザム!』(19)もある。
HBO Maxオリジナル作品は現在のところルーニー・テューンズ、アナ・ケンドリック主演のラブコメ「LOVE LIFE」、セサミストリートのエルモがホストになるトークショー「The Not-Too-Late Show with Elmo」など6本。今後追加される作品も多いが、アンセル・エルゴート主演の東京を舞台にしたドラマシリーズ「Tokyo Vice」を含め、新型コロナウイルスの影響で制作が中断している作品に期待がかかっている。
メディアの評判では、コロナ禍に突入して3か月がたち、自宅検疫中の人々が従来のストリーミング・サービスに飽きて来たところでサービス開始となるHBO Maxに大きな期待がかけられている。ほぼ最高値となる月額金額と今後のオリジナル制作状況によっては、契約者数に伸び悩む可能性もある、としている。Netflixやアマゾン・プライム、Disney+といった先行ストリーミングサービスとの違いを挙げるとすると、クラシック作品の充実ぶりがある。
また、アルゴリズムではなく古典的な生身の人間によるキュレーションによって作品群がコレクションにまとめられている点も異なる。HBO Nowの代から、シンプルなインターフェースで作品一覧がアルファベット順に並べられているサービスは、ミレニアム世代よりも上の世代向けという印象だった。Max移行後もシンプルさとアルゴリズムに頼らないキュレーションを継続し、テクノロジーに不慣れな客層を安心させる設計になっている。スタジオジブリ、DCコミック、クランチロール、HBOとブランド別に区分けされているのも、もうすでに観たい作品が決まっている、もしくはわかっている人々に向けたサービスで、Netflixのように‟セレンディピティ”をプレゼントしてくれるサービスではない。Netflixがコードカッター(ケーブルテレビを契約せずにネットで視聴する層)を中心に契約者を増やして来たのに比べ、HBO Maxはあくまでもケーブルテレビでは放映されないような作品をビデオ・オン・デマンドに取り代わって観せるサービスなのだろう。
文/平井 伊都子