批評家が選ぶ、野球映画ランキング!名作続出の“フレッシュ”10選
一口に“野球映画”と言っても、そのテイストは様々。登場人物たちが野球に勤しむ姿を描いた作品から、往年のスター選手の伝記作品、はたまた野球選手の野球以外の生き様にフォーカスを当てたものなど、そのジャンルもコメディからシリアス、ファンタジーに至るまで実に幅広い。とはいえアメリカの映画データベースサイト「iMDB」で「Baseball」をキーワードにして検索すると出てくるのは2000タイトルほどで、そのほとんどが劇中に軽く野球の要素が登場する程度。メインプロットとして野球が関わってくる作品は、そのなかでも10分の1程度しかなく、意外にも映画向きの題材ではないのかもしれない。
そうしたなかで、もっとも高い評価を獲得したのは野球映画の代名詞ともいえる『がんばれ!ベアーズ』。元マイナーリーグの選手だった男がひょんなことから少年野球チームのコーチをすることになり、弱小チームを成長させていくという典型的なサクセスストーリーで、大人から子どもまで幅広く楽しめる傑作だ。続編やテレビシリーズ、さらにはリメイク版も制作されたように、アメリカの野球映画を代表する本作には、名子役テイタム・オニールであったり、後にアカデミー賞候補にもなるジャッキー・アール・ヘイリーなど意外な発見が多数。
また同じく97%フレッシュを獲得した『さよならゲーム』は、野球を物語の軸に置きながらも、あくまでも描かれるのは男女の三角関係。自身もマイナーリーグの選手だったという移植の経歴を持つロン・シェルトン監督がメガホンをとり、彼のチームメイトだった人物をモデルにして物語が構築されたという。それにしてもケヴィン・コスナーとスーザン・サランドン、ティム・ロビンスという3人の大スターの共演は、いま見てもあまりにも贅沢な取り合わせであろう。
ほかにも経営難に陥ったメジャーリーグチームを常勝チームへと導いた実在の人物の成功譚をベースに、従来とは異なるアプローチで野球を描き出したブラッド・ピット主演の『マネーボール』や、自分の信念に従って野球場を作り始めた農場主の男の前に往年の名選手たちの亡霊が現れるというちょっぴり不思議な感動作『フィールド・オブ・ドリームス』も。作品数が少ないからこそ、長年にわたって支持される名作が生まれるというのも、この野球映画というジャンルの特徴なのかもしれない。
しかしなんと言っても野球映画の醍醐味は、語り継がれるべき物語を持った野球選手たちの知られざる内面に迫る伝記作品だろう。35歳にしてメジャーリーグデビューを果たした史上最年長ルーキー、ジム・モリスを描いた『オールド・ルーキー』(そして実際にモリスが入団するより15年前に、“35歳のルーキー”を描いていたロバート・レッドフォードの『ナチュラル』も必見だ)、アフリカ系アメリカ人として初めてメジャーリーガーになったジャッキー・ロビンソンを描いた『42 世界を変えた男』。とりわけ後者は、いまの時代に観るべき一本と言えるだろう。
文/久保田和馬