一撃必殺!孤高のスナイパーの戦いを描く「山猫は眠らない」シリーズの色あせない魅力
孤高の狙撃手が過酷なミッションに挑む戦争アクション「山猫は眠らない」シリーズ。リアルな描写とスリリングな展開で多くのファンに支持されている本シリーズ、いよいよ最新作『山猫は眠らない8 暗殺者の終幕』(8月14日公開)がこの夏スクリーンに登場する。そこで、1993年公開の第1作から27年にわたって進化を続けるシリーズの魅力を振り返ってみたい。
本シリーズの主人公はアメリカ海兵隊のトーマス・ベケット。70人を超える標的を射殺してきた、生きるレジェンドというべき狙撃手“スナイパー”だ。引退がささやかれるベテランだが、時間があれば弾頭を磨き、指先を刺激することで研ぎ澄まされた感覚を保持。同僚とも必要以上の関わりを避けるいっぽうで、死んだ仲間のことを忘れずに、彼らの認識票を肌身離さず持ち歩く熱いハートの持ち主でもある。
そんなベケットを演じているのが近年はメイバイプレイヤーとして活躍しているトム・ベレンジャーだ。『プラトーン』(86)の鬼軍曹や、『誰かに見られてる』(87)の寡黙な刑事など男臭い役を演じてきた彼にとって、無骨さの中に人間味がにじむベケットはまさに適役。心に傷を抱えたストイックな処刑マシンを、圧倒的な存在感で演じている。
なお本作はフィクションだが、ベケットにはモデルがいる。海兵隊でベトナム戦争に従軍したカルロス・ハスコックがその人。狙撃手として数々の殊勲をあげた後、多くの若手を育成した伝説の軍人で、ケベックの名ゼリフ「ワンショット・ワンキル(一撃必殺)」もハスコックの口癖からの流用だ。射撃の手腕だけでなく、退役後の恵まれない生活や息子も同じ道に進むといった設定にもハスコックの人生が反映されている。
シリーズの見どころは、なんといっても全編を彩るリアルな映像。銃の扱いにはじまり観測手との緻密な連携、ジャングルでの処世術など、死と隣り合わせの兵士の姿が丁寧に描写されている。シリーズを通し多用されているのがスコープ越しのビジュアル。ターゲットを延々と捕捉するスリル満点の狙撃シーンにはじまり、離れた味方とのコミュニケーションに使ったり、時にはスコープ越しに目が合った敵と一対一で撃ち合うことも!リアル+映画的カタルシスあふれる映像群が、その人気を支えているといってもよいだろう。
本シリーズは過去7作が製作されてきた。記念すべき第1作では、パナマへの政治的介入を目論むワシントンの命令を受けたケベックが、麻薬組織の息のかかった大統領候補の暗殺に挑む。過酷なミッションに加え、若きエリート兵士ミラーとの師弟ドラマ、麻薬組織に寝返った元同僚との宿命のバトルも描かれた。11年ぶりの続編となった『山猫は眠らない2 狙撃手の掟』(02)では、前作で右手人差し指を失い除隊したベケットが、CIAの要請で軍に復帰。バルカン半島に飛び、敵だらけの市街地で激しい死闘を繰り広げる。いっぽう『山猫は眠らない3 決別の照準』(04)は元戦友との対決を軸に、かつて愛した女性との再会などベケットの人物像が深掘りされた。
続く『山猫は眠らない4 復活の銃弾』(11)から主人公はベケットの息子ブランドンにシフト。国連軍の任務でコンゴに派遣された彼を、1作でベケットに鍛えられたミラーが狙撃手に育てていく。ミラーは『山猫は眠らない6 裏切りの銃撃』(16)にも登場し、メンターとしてブランドンをサポートした。そして一流の狙撃手に成長したブランドンは、『山猫は眠らない5 反逆の銃痕』(14)でついに父ベケットと共闘。『山猫は眠らない7 狙撃手の血統』で2人は司令官と部下として作戦に参加し、ミラーを交えた師弟3ショットも披露した。
シリーズ最新作『山猫は眠らない8 暗殺者の終幕』は、ブランドンが暗殺事件の容疑者として追われる物語。引退したベケットと共に、CIAや謎の組織に狙われる。そんな今作のトピックが、ハリウッド映画初挑戦となる秋元才加の出演。彼女はCIAやロシアの暗殺者らに育成された、スゴ腕の暗殺者を演じている。これまでも本シリーズは、多くの女性キャラが激しいアクションを見せてきただけに期待は高まるばかり。ベケット父子の活躍はもちろん、アクションや実弾による銃で特訓を積んだ秋元がどんな見せ場を飾るのかにも注目したい。
文/神武団四郎