話題の中国SF「三体」翻訳者・大森望が語る『TENET テネット』…SFで“時間”を描く意味とは?
IMAX撮影を本格的に取り入れた『ダークナイト』(08)を筆頭に、革新的な映像で世界を魅了するクリストファー・ノーラン監督。一方で、彼の魅力は、“時間逆行”を描いた初期作『メメント』(01)、複雑に入り組んだ夢の世界が舞台の『インセプション』(10)、広大な宇宙で愛の物語が展開された『インターステラー』(14)のように、様々なSF要素を取り入れた巧みなストーリーテラーとしても表れている。そんなノーラン監督の最新作『TENET テネット』(9月18日公開)が控えており、想像力をかき立てる謎多き予告編が話題を集めている。
「MOVIE WALKER PRESS」では「WHAT IS TENET?」をテーマに、識者たちが本作の展開を大胆予想!第1回の山崎貴監督、第2回の都市ボーイズに続く第3回は、SFを中心に書評家、翻訳家として活躍する大森望氏が企画に参加。近年はテッド・チャンの「息吹」、日本でも大ヒットした世界的ベストセラー「三体」「三体II:黒暗森林」の翻訳も手掛けている。SF作品に精通している大森氏に、『TENET テネット』の展開予想、SF作品で“時間”をテーマにすることの魅力、現代SFの潮流などについて語ってもらった。
「クリストファー・ノーランらしい、けれんみたっぷりの派手なアクションになりそう」
『TENET テネット』予告編のわずかな情報からわかっていることは、時間の“逆行”が物語の鍵になること、“死後の世界”や“第三次世界大戦”といった意味深な言葉が登場することなど。この映像を見た率直な感想を大森さんに聞くと、「クリストファー・ノーランらしい、けれんみたっぷりの派手なアクションになりそうですね。『インセプション』をもっとスペクタキュラーにした感じ。細かいネタがたくさん埋め込まれていそうなので、それがどう生かされていくのか楽しみです」と回答。続けて、わずかな情報からストーリー展開も分析してくれた。
「なんらかの形で時間を操作して歴史に介入する(不都合な歴史的事件を修正する)組織があり、そのエージェントにスカウトされたジョン・デヴィッド・ワシントン演じる主人公が、過酷なテストに合格し、世間的には死んだことにされる(“あの世”の人間になる)。組織に加わったあとは、世界についての秘密を教えられ、世界を救うというミッションが与えられる。時間の向きを逆転させる(過去から未来へ向かって生きる)力を使って、実行不可能なミッションが始まる。これだけだとさすがにシンプル過ぎるので、裏切りがあったり、裏の裏があったり、ワシントン(演じるキャラクター)が組織から追われて孤立無援になるところに意外な協力者が現れる…といった展開があるのではないでしょうか」
WHAT IS TENET?クリストファー・ノーランが仕掛ける『TENET テネット』特集
■「息吹」
発売中
価格:1,900円+税
著:テッド・チャン/訳:大森望
■「三体」
発売中
価格:1,900円+税
著:劉慈欣/訳:大森望、光吉さくら、ワン・チャイ/監修:立原透耶
■「三体Ⅱ 黒暗森林(上・下)」
発売中
価格:各1,700円+税
著:劉慈欣/訳:大森望、立原透耶、上原かおり、泊功
発行元はすべて早川書房
■『オデッセイ』
Blu-ray 発売中
価格:1,905円+税
発売・販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン
■『メッセージ』
Blu-ray 発売中
価格:4,743円+税
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント