盟友シャイア・ラブーフとの絆を『ハニーボーイ』監督が明かす「私の言葉を求めていたような気がします」
「3カ月ぐらいで70稿も書き直してくれた」
本作は、ラブーフがモデルの人気俳優、オーティスが主人公。飲酒運転による事故を起こした彼は施設へ送られ、そこで「PTSDの兆候がある」と診断される。原因を突き止めるため、記憶をノートに書き起こし始めた彼は、12歳の子役だった自分と父ジェームズとの思い出に行き着く。元道化師で前科者の父はオーティスのマネージャー役を務め、息子の稼ぎを糧に、モーテルで親子二人のその日暮らしをしていたのだ。
第1稿を書き上げたラブーフは、早速それをハレルのもとに送り届けたという。それを起点として、脚本をブラッシュアップするやり取りが繰り返された。「本当に“やり取り”という言葉がぴったりで、3カ月ぐらいで70稿もシャイアは書き直してくれたんです。最初は父と息子だけの物語で、舞台もモーテルの部屋だけでした。意見交換を交わすなかで、屋外へと世界が広がり、22歳のオーティスも登場したのです」
途中、ラブーフは執筆作業に行き詰ったそうだが、それが作品にとって良い方向へ進んでいく。「最終稿に近づいてきた時、彼は『もう書けない!』と匙を投げました。そして、オーティスの父親を演じることもあり、ほかの出演者とのワークショップを始めたんです。その時に、FKAツイッグスらとの交流を深め、彼女の母性を物語に取り入れるなど、俳優たちからインプットしたものを脚本に反映していったようです」
「“自分の記憶を演じる”作品を作ることがライフワーク」
先述の通り、ラブーフはオーティスの父、ジェームズ役としても出演している。彼はラブーフの父親を模したキャラクターでもあり、その記憶が現在に影響を及ぼしていることを考えると、彼を演じることは相当の“痛み”が伴ったはずだ。それでも、ジェームズ役にはラブーフしかいなかったとハレルは説明する。
「シャイアが製作に参加した『ラブ・トゥルー』は、若い頃の自分を演じることで、なんらかの自助作用を経験するサイコセラピー的な作品です。また、天国への入り口で死者が一番大切な思い出を選択する是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』(99)に私自身がインスパイアされたこともあり、“自分の記憶を演じる”作品を作ることがライフワークでもありました。それに、シャイア自身が彼の父親を演じることで、演技にメタ的なレイヤーが加わりますよね。彼のパフォーマンスアートにもそういった要素があるので、とてもおもしろいことに思えたんです。彼自身も最後の一押しを待っていたというか、私の言葉を求めていたような気がします」