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本広克行、押井守、上田慎一郎らが新・映画レーベルを設立!第1弾作品は今秋公開

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本広克行、押井守、上田慎一郎らが新・映画レーベルを設立!第1弾作品は今秋公開

小中和哉監督
小中和哉監督[c]2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会

●小中和哉(監督)

「映画ファンにとって、最大公約数的な大型商業映画だけでなく、意欲的、冒険的、個人的な限られた予算で制作された映画が見られることは大切なことだと思います。それが映画の裾野を広げ、テレビとは違う映画という文化を豊かにすることだと感じております。かつて日本映画にはそのような限られた予算で意欲的に制作された映画がありました。『ATG』(日本アート・シアター・ギルド)は『限られた予算』という条件と引き換えに自由を得た監督たちが勝負を挑む場として観客の注目を集めました。前衛や反体制、芸術という要素に映画ファンが興味を示した時代でした。オリジナルビデオという映画館にかからないビデオ用映画では、アクションややくざ、エロというジャンル映画が量産されるなか傑作が生まれましたし、ビデオ市場メイン、ミニシアター単館公開という図式で作家性の高いユニークな映画も生まれる余地がありました。
しかし、ビデオが売れなくなり映画館での回収がメインとなった昨今、映画興行も映画制作も制限があると感じています。変化している時代に多様なジャンルの映画作品を届けるため、監督一個人ではなく、志のある映画監督が集まり、共同戦線を組み、ムーブメントを作り上げる必要を感じていました。バラバラに時々いい作品があっても、継続して一つのジャンルを作り上げないと、映画ファンには届きません。ATG映画、Vシネマに匹敵する新しいブランドが一つ存在しても良いと思うのです。
そんなことを考えて本広さんや押井さんの賛同を得てシネマラボ企画は動きだしました。自主映画からスタートして商業映画に進出した大先輩・大林宣彦監督は生涯『映画監督』ではなく、『映画作家』と名乗っていました。商業主義に飲み込まれることなく、自主映画、アマチュア映画の心を忘れず、プロフェッショナルな監督ではなく、作家であろうとしてきました。
今回の企画は、大型商業映画を撮ってきた押井、本広両監督は、初心に戻って個人の想いに忠実な自主映画のような作品を作ろうという気持ちがあるでしょうし、自主映画から商業映画へ活躍の場を広げた上田監督にとっては、自主映画の自由さを失わずに商業映画が撮れる場としての魅力を感じての参加だと思うのです。つまり、『監督が自由に映画に情熱を注ぐ魂』と『商業映画』の幸福な融合ができればと考えています」

●本広克行(『ビューティフル ドリーマー』監督)

「シネマラボというレーベルは、当初小中監督から『現代のATG』を作らないかという提案から始まりました。ラボ=実験。予算に制限がありながらも監督の作家性を最優先し、後世に残る作品を生みだすことを目的としたレーベルです。映画はオールドメディアであり、長い間その形を変えていません。それをどのような形で進化させるのかをいつも考えています。興行的には、厳しいかもしれません。でも、やらないと後世に残る映画は作れない。作家性のある作品が少なくなっているいま、次世代の若者のクリエイターたちが撮りたいものを撮れる場を作れないか、というのをずっと思っていました。その土台に、押井監督、小中監督、上田監督をはじめ私たちがなれればいいと思っています。
その第一弾となったのが、『ビューティフル ドリーマー』です。ずっと押井守監督と組んで実写を撮ってみたいと思っていました。今回のために押井監督には『夢みる人』という原案となる本を書いてもらいました。当初は登場人物が軽音楽部だったのですが、それを私なりにアレンジして映画研究会にし、主演を小川紗良さんに演じてもらいました。小川さんは実際に大学で映画研究会に入って作品を作っていて、自然と出る演出する言葉を知っているのと、信じたことに周りを巻き込んで猛進して行きそうな強い眼差しが今回の主演に絶対に必要な人でした。すべての映像作品を作っていてずっと思っていたことがあります。いまや当たり前のように作品の中だけで交わされる省略された無駄のないセリフを、演者から出るリアルな話し言葉を使って作品を作れないか。いまでは機材の性能が上がっていて、昔は録音できなかったセリフもいまだからできる方法があります。急に違う作り方をすると観ている人は拒否反応があることを知っていながらも、このシネマラボで自分なりの『実験』として、エチュードという形で映画の中のセリフをリアルに演出させてもらいました。ぜひこの不思議な映画を、多くの人にいろいろな感情で楽しんでもらえればと思います」

●小川紗良(『ビューティフル ドリーマー』主演)

「大学時代、サークルで映画を撮っていた私にとっては、あのころを追体験するような日々でした。映画サークルって、いろいろな珍事件が起きるんですよ。データが飛んだり、お金が尽きたり、機材が壊れたり、しょうもないことでケンカしたり、色恋沙汰がもつれたり。それでも映画を撮りたい気持ちは突っ走って、かぐや姫もドン引きな無理難題を言ってみたり。部室には余計なものがいっぱいあって、3留くらいしてる先輩が昼寝してる。”伝説のOB”はいつまでもサークルにはびこって、ああだこうだと言ってくる。ほんとうに、映画サークルって変。それでも、サークル活動や映画撮影の在り方が変わり果ててしまったいまとなっては、あの変な日々も懐かしく思えたり。2020年、思いがけずこの映画は『癒し』になるかもしれません。人と人との距離の近さが生む珍事件たちに、ぜひ心をふっと緩ませてみてください。夢みる人、そしてかつて夢みた人に、届きますように」

文/トライワークス

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