ジョニー・デップが久々のインディーズ映画で本領発揮!『グッバイ、リチャード!』の演技が真に迫る

コラム

ジョニー・デップが久々のインディーズ映画で本領発揮!『グッバイ、リチャード!』の演技が真に迫る

余命宣告を受けた男が残りの時間をありのままに生きようとする『グッバイ、リチャード!』(公開中)。本作で主人公の大学教授、リチャードを演じるのは、ハリウッド随一の個性派俳優、ジョニー・デップ。ミニシアター系から超大作まで、大小様々な作品に出演するデップが、久しぶりにインディペンデント作品に帰ってきた。

人生の紆余曲折を経験してきたジョニー・デップのリアルな演技は必見!
人生の紆余曲折を経験してきたジョニー・デップのリアルな演技は必見![c]2018 RSG Financing and Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

2000年代以降は「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジャック・スパロウや、『チャーリーとチョコレート工場』(05)のウィリー・ウォンカ、「ファンタスティック・ビースト」シリーズの闇の魔法使いグリンデルバルドなど、クセの強いキャラものでの活躍が目立つデップ。一方で、『クライ・ベイビー』(90)で映画初主演を果たし、ティム・バートン監督作『シザーハンズ』(90)が大ヒットした後も、『ギルバート・グレイプ』(93)や『妹の恋人』(93)、『エド・ウッド』(94)など、ヒューマンドラマやで伝記映画で等身大のキャラクターや実在の人物にも挑戦し、着実に演技力を磨くことに徹していた。

【写真を見る】27年前のジョニー・デップ、凛々しい!『ギルバート・グレイプ』の撮影が行われていた1993年当時
【写真を見る】27年前のジョニー・デップ、凛々しい!『ギルバート・グレイプ』の撮影が行われていた1993年当時写真:SPLASH/アフロ

話題作でメインキャラクターを演じるだけでなく、賞レースでも存在感を発揮。『ネバーランド』(04)と『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪』(07)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、後者ではでゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)に輝いた。しかし、2010年代に入るとその活躍にも陰りが…。
『ローン・レンジャー』(13)、『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』(15)、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(16)などで望まれた興行成績をあげることができず、2015年と16年にはその高額なギャラを揶揄して「コスパの悪い俳優部門」第1位という不名誉な称号も得ることに。さらに、私生活でも不運が続き…。15年に女優のアンバー・ハードと婚約するも、16年に彼女より離婚を申請され、その際にデップからDVを受けていたと公表されてしまう(泥沼のバトルは継続中)。

2010年代は出演作の興行不振が続いていたデップ
2010年代は出演作の興行不振が続いていたデップ写真:SPLASH/アフロ

そんなデップの悲喜こもごもを内面に押し込め、にじみ出る哀愁を漂わせながら、彼の心境をありのままに表現したかのような作品が『グッバイ、リチャード!』だ。「余命180日です」。唐突に告げられた余命宣告により、大学教授のリチャードの生活は一変する。追い打ちをかけるように、妻に大学の学長と不倫していることを告白され、娘からもレズビアンだと打ち明けられる。予期せぬ出来事の連続に、死を目前にして怖いものがなくなったリチャードは、残りの人生を自分のために謳歌しようと動きだす。

大学教授のリチャードは残りの人生を自分のために生きることにする
大学教授のリチャードは残りの人生を自分のために生きることにする[c]2018 RSG Financing and Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

吹っ切れたリチャードの行動はとにかく大胆。受け持つクラスの生徒を様々な理由で追い払い、授業中に酒を飲み、マリファナを吸うなどやりたい放題。残ったわずかな生徒を教室の外へ連れ出したかと思えば、バーで課外授業を行い、その場の勢いでウエイトレスとトイレで関係を持つことも。

堂々と教室でマリファナを吸う!?
堂々と教室でマリファナを吸う!?[c]2018 RSG Financing and Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

あけすかにものを言い、ルールや立場に縛られない生き方をするリチャード。そんな彼の言動に困惑気味だった家族や友人、生徒たちだったが、しだに影響を受け心に変化が起きていく。劇中でリチャードが放つ言葉も印象的で、「凡庸さに屈するな」「ほかの98%の人間に屈するな―それは世界にとっても大きな損失だ」「人生とは鳥のさえずりだ」といったメッセージの数々は、登場人物だけでなく、作品を観ている側の胸にも静かに響いてくる。

青空の下で生徒の発表を聞く
青空の下で生徒の発表を聞く[c]2018 RSG Financing and Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

人生の紆余曲折を経験してきたデップが演じるからこそ、リチャードというキャラクターがよりリアルに感じられる『グッバイ、リチャード!』。破天荒だけどどこか筋の通った本作での“生き様”に、きっと誰もが前へ進む勇気をもらえるはず。

文/平尾嘉浩(トライワークス)

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