大倉忠義と成田凌『窮鼠はチーズの夢を見る』でお互いに感じた“色気”と“かわいさ”
「いまでなければできなかった作品」(大倉)
大倉にとって本作は、『100回泣くこと』(13)以来、約6年ぶりの単独主演映画となる。行定監督のもとで新たなチャレンジを果たし、映画の醍醐味を感じることもあったと語る。
大倉は「監督とも話していたのですが、例えば登場人物の目が動くだけでも、スクリーンのなかで考えると1メートルぐらいの動きがあるもの。だからこそ、過剰にリアクションをしなくても伝わるものがあったり、繊細な表現にもチャレンジしたりすることができる。また現代は消費される世の中でもありますが、映画というのは、未来にも残っていく。そういったものに参加できるのはうれしいことですし、この映画も“簡単には消費されないもの”として完成したと思っています」と胸を張る。
続けて「ビジュアル的な面でも、いまでなければできなかった作品だと思います。行定監督とご一緒するなんて、やりたいと思ってもなかなかできるものではありませんし、とても贅沢な時間を過ごさせていただきました。監督とも成田くんとも、いまというタイミングに出会えた喜びを感じています」と充実感もいっぱいだ。
「本作を通して“なにもしないということをする”のを学んだ」という成田は、「チャレンジングでしたね」としみじみ。「大倉くんも言っていたように、映画だと吐息ひとつもしっかりと聞こえてくるわけですよね。表現しようとしなくても、2人の空気感からにじみ出てくるものある。特に本作は、2人がそこに立っているだけで伝わるものがある映画だと思っています。行定監督とは、恭一と今ヶ瀬の心の動きについてずっと話をしていて、そういった時間が監督からの演技指導だったのかなと。僕自身、単純に撮影の日々がすごく楽しかったですし、完成した映画を観て『恭一も、今ヶ瀬が知らないところで彼を想ってくれていたんだな』と思うと、すごくうれしかったです」と目を細めていた。
取材・文/成田おり枝