【今週の☆☆☆】 切ないラブストーリー『窮鼠はチーズの夢を見る』、運命を変えた日米海戦を描く『ミッドウェイ』など、週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、9月11日週末の公開作品をピックアップ。大倉忠義&成田凌共演の恋愛映画、日米豪華キャスト結集の戦争ドラマ、岩井俊二監督が中国で撮ったラブストーリーの、魅力的なラインナップが揃った!
恋愛の負の部分も余すところなく映しだす…『窮鼠はチーズの夢を見る』(9月11日公開)
原作をなぞるのではなく、映画の特性を生かした実写化ならではの世界観を作り上げ、それぞれが楽しめる作品作りをする行定勲監督。本作もBLを扱ったベストセラーコミックが原作でありながら、生身の人間同士がぶつかり合って生まれる愛の痛さ、いやらしさ、汚さ、惨さ…など負の部分も余すところなく映し出し、観ていて苦しくなるほどの恋愛映画になっている。げっそり痩せて役に挑んだ成田凌は性別を超越し、ダークサイドの『アメリ』といった印象。恋に落ちた者ゆえのかわいさ、怖さを体現。狂う女がいるのではなく、狂わせる男がいるのだと納得させられる大倉忠義は相手を傷つけまいとするあまり、結果的に相手が壊れるまで追い詰める優男の罪深さをいるだけで示す。アイドルらしからぬ挑戦的な演技も衝撃だが、何よりもその存在感に舌を巻いた。成田の演技が引き出したものか、大倉の包容力が成田を自由にさせたのか。二人の親和性が余韻を残す。(映画ライター・髙山亜紀)
縦横無尽の戦闘スペクタクルは迫力満点…『ミッドウェイ』(9月11日公開)
太平洋戦争時の有名なミッドウェイ海戦は1976年にも映画になったが、その再映画化に『インデペンデンス・デイ』のヒットメーカー、ローランド・エメリッヒが挑んだ。物語は1941年の真珠湾攻撃に始まり、翌年の海戦へと発展。海と空で展開する縦横無尽の戦闘スペクタクルはエメリッヒ作品らしく迫力満点。一方で、日米双方をバランスよくとらえている点に注目したい。どちらの軍人も、粛々と自分の仕事をこなすが、国家の勝敗こそあれ、個人レベルでは勝者も敗者もなく、争いの無益さのみが静かに浮かび上がる。アメリカをひいきせず、戦争の現実を客観的に見据えている点がいい。豊川悦司をはじめとする日本人キャストの熱演も光る力作!(映画ライター・有馬楽)
“ノスタルジックな手触り”にハマって欲しい…『チィファの手紙』(9月11日公開)
先に公開された『ラストレター』の、岩井俊二監督自身による中国バージョン。となると既視感たっぷりのハズだが、これがどうして、むしろさらに心に染みる。なるほど、実は本作の方が先に撮られたという。道理で…と、いらぬ比較はさておき、後からジワジワくる“ノスタルジックな手触り”に、切なくどっぷりハマって欲しい。
亡き姉の同窓会に、妹のチィファ(ジョウ・シュン)が姉の死を知らせるために出席する。しかし姉本人に間違われて言い出せず、かつての初恋相手、チャン先輩に遭遇。当時、姉に恋していたチャン先輩に連絡先を渡されたチィファは、姉のフリをして文通を始める――。
約30年の時を挟む中学時代と現代が、交錯しながら物語は紡がれる。中国の88年が、日本のそれに比べてずっと“時代を遡る感”が強いのも、より“素朴な切なさ”を醸し出すのに一役買っている。人生のままならなさ、巡りあわせの不思議が、じんわり目頭に涙を溜める。プロデューサーを、名作『ラヴソング』(96)のピーター・チャンが務めている。(映画ライター・折田千鶴子)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス