巨匠エンニオ・モリコーネをオスカー初受賞に導いた…クエンティン・タランティーノとの不思議な関係性
500作以上の映画音楽を手掛け、その道の世界的巨匠と謳われる作曲家エンニオ・モリコーネが、今年の7月に91歳で逝去した。現地メディアの報道によると亡くなる数日前に転倒して骨折し、ローマの病院での療養中に発症した合併症が原因と言われている。モリコーネと言えば、『荒野の用心棒』(64)をはじめとするマカロニ・ウェスタン、『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)の盟友ジュゼッペ・トルナトーレとの数々のタッグなど、様々な作品や名監督たちとの仕事ぶりが絶賛を浴びてきた。
そんな言葉では語り尽くせない功績を残したモリコーネの晩年のハイライトを挙げるなら、2016年にクエンティン・タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』(15)で、米アカデミー賞作曲賞を受賞したことだろう。意外にも彼の同賞の受賞は本作が初めてで、過去に5度ノミネートされたほかは、2007年に長年にわたる映画音楽への貢献を評価されたアカデミー名誉賞を授与されたのみだった。悲願成就を導いた監督として、モリコーネとタランティーノは固い絆で結ばれているのかと思いきや、案外そうでもないのが興味深いところ。ひと筋縄ではいかない2人の関係性に迫ってみたい。
タランティーノを酷評するモリコーネ
ハリウッド随一の“映画オタク”でマカロニ・ウエスタンの大ファンでもあるタランティーノにとって、モリコーネは神にも等しい存在だった。タランティーノが彼の監督作でオリジナルスコアを作ることは滅多になく、自身のコレクションから使用する楽曲を選ぶ話は有名で、モリコーネが過去に手がけた楽曲も「キル・ビル」二部作、『イングロリアス・バスターズ』(09)、『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)などで使用の許可をもらい、『ジャンゴ~』では「アンコラ・キ」という曲も書き下ろしてもらっている。
一方で、モリコーネはタランティーノについて「『イングロリアス・バスターズ』以来、また僕と仕事をしたいと話していたが、それはできないと伝えた。彼のスケジュールはギリギリで十分な時間を与えてくれない」と過去の記事で語っている。続けて、「(タランティーノは)一貫性を欠いた方法で、映画の中で音楽を使う」とも説明しており、制作スケジュールの過密さ、一つの映画に様々なミュージシャンの楽曲を使用する手法にも不満があったそうだ。また、モリコーネ自身が残酷な描写や流血シーンを嫌悪しており、タランティーノ作品についても「正直言って好きな映画ではない」と語っている。
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発売・販売元:ギャガ