巨匠エンニオ・モリコーネをオスカー初受賞に導いた…クエンティン・タランティーノとの不思議な関係性
タランティーノの強い愛がモリコーネの心を動かした?
このままでは、タランティーノの片想いで終わってしまうが、『ヘイトフル・エイト』で再び、二人はタッグを組むことになる。しかも、今回はタランティーノ作品で初めて、全編オリジナルスコアで構成され、それをモリコーネが書き下ろすことになったのだ。タランティーノについて辛辣な言葉を投げたモリコーネだが、彼を酷評したことが記事になった後に、「自分の発言が誤解を招く形で報じられた」と一部を否定。本作のオファーを受けた際も、イタリア語で書かれた脚本が送られてきたそうで、タランティーノの強い愛に心を動かされたのかもしれない。
制作された楽曲はトータル30分ほどで、決して多いほうではないが、もともとテーマ曲だけの予定だったのが、作曲中にモリコーネの火が付き、何曲も書いてくれたのだという。本作のインタビュー映像などでも、タランティーノが「長年の夢が叶った!僕の1番好きな作曲家だ。ベートーベン以上にね」と感激を言葉にし、モリコーネも「喜んで引き受けた。監督は余計な口を出さず、自由にやらせてくれた。落ち着いて作曲できたよ」と応えており、仲睦まじげな様子を確認できる。
アカデミー賞でタランティーノへの感謝の気持ちをスピーチ
『ヘイトフル・エイト』で作曲賞を受賞した際のモリコーネは、スタンディングオベーションと大きな拍手で迎えられるなか、「すばらしいサウンドトラックには、すばらしい映画がなくてはいけません。クエンティン・タランティーノ監督に感謝を捧げます、私を選んでくれてありがとう!」とスピーチするなど感無量だった。これまでの経緯を考えると、タランティーノ作品での受賞は不思議な気持ちだったのかもしれない。
本作をはじめ、モリコーネが楽曲を手掛けた作品は数多く、現在も4K版やイタリア完全版が公開中の『海の上のピアニスト』(98)など、今後も映画館やテレビ、ネット配信でも目にする機会は多いはず。鑑賞する時は、楽曲のすばらしさ、それぞれの監督との関係性について想像するのもおもしろいかもしれない。
文/平尾嘉浩(トライワークス)
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