『TENET テネット』クリストファー・ノーラン&ジョン・デヴィッド・ワシントンの共犯関係「自分が観たいものじゃないと作りたくない」
“唯一無二の世界観”や“誰も観たことのない世界へ連れていってくれる”などの表現は、斬新かつ優れた映画のみに捧げられる文句だが、クリストファー・ノーラン監督においては、毎回そのラインを見事にクリアしてくる。“時間の逆行”をテーマにした最新作『TENET テネット』(公開中)はその極みであるが、かなりトリッキーな撮影にトライしたジョン・デヴィッド・ワシントンら俳優陣の奮闘も、心から称えたい。そこで、オンラインインタビューを敢行し、ノーラン監督とワシントンの2人を直撃した。
ノーラン監督と言えば、長編監督デビュー作『フォロウィング』(98)や『メメント』(00)で、時系列をシャッフルしたり、『インターステラー』(14)で有人惑星間航行特有の時間という概念を可視化したり、第二次世界大戦を描く『ダンケルク』では1時間、1週間、1日の物語を同時並行して描いたりと、時間を巧みなギミックとして使った作品を数多く手掛けてきた。今回、時間の逆行というテーマに真っ向から挑んだ理由については「世の中に対する見方を、少し変えてみてはどうだろうと思った」からだとか。
「私の過去作においての時間は、メタファーであったり、話を進めるための仕掛けだったが、今回は時間を物理的なものに落とし込み、リアルに映像で見せようと思った。だから、スケールの大きなアクション満載のスパイ映画に仕上げつつも、そこにSF要素を入れ込むことで、世界に対する見方が新鮮になるし、楽しい映画になるのではないかと思った」。
ワシントンが演じる名もなき男は、ある出会いから、時間を巻き戻す“時間の逆行”を操る術を知る。やがて彼は、人類滅亡よりも悲惨な事態を引き起こすとされる“第三次世界大戦”を阻止するため、命懸けのミッションに挑む。そのカギとなるのが謎の言葉“TENET(テネット)”だ。