松雪泰子、『甘いお酒でうがい』でときめいたシソンヌじろうの脚本「なぜこんなに女性的な感性がわかるのだろう」
「佳子と2回り年下の岡本くんとの関係が、どんなバランスになるのかは未知数でした」
大九監督の演出は刺激的だったようで「まるでびっくり箱がポンと開くような感じのディレクションが毎日入ります。それは脚本で描かれているものと少し違ったり、ある時は真逆だったりもしますが、セッションみたいな感じでおもしろかったです」。
佳子の同僚で後輩の若林ちゃん役を演じる黒木華も実にチャーミングだ。「人生において、絶対的な味方でいてくれる存在こそ宝物だと思います。佳子さんは、少しネガティブなところがあるけど、あんなにすてきな友人がそばにいるから、とても幸せな人だなと思いました」。
さらに、佳子の2回り年下である岡本くん役を、個性派俳優の清水尋也が好演している。「佳子さんと岡本くんとの関係が、どんなバランスになるのかは未知数でしたが、撮影はすごく楽しくできました。あまり年齢の差は考えず、“人と人”という感じの関係性でした。だから、現場で演じながら、こういうこともありうるんだなと、客観的に見ている自分もいました」。
松雪は、印象的な台詞については、本作のポスターにもある「いま、一番まっすぐ立てている気がする」を挙げる。「佳子さんは自分の世界をしっかり持っているけど、すごくグラグラしているんです。そこが彼女の魅力でもありますが、いろんなことに巻き込まれ、日々感情が変化していくなかで、『ああ、いまはきっと大丈夫』と思える瞬間って、自分もあるなと思いました。私自身も、常にそういうことを確認するタイプなので、すごく共鳴しました」。
また、佳子を演じたことで、様々なメッセージを受け取ったという松雪。「佳子さんは、ネガティブとポジティブの間でずっと揺れ動きながら、1つ1つ自分のことを確認し、前へと進んでいきます。そして周りの人からの愛に支えられ、それをちゃんと受け取ることができた瞬間、世界が変わる。つまり人生って、自分の捉え方次第なんです。本作は、そういうことをすごく丁寧に表現した作品だと思いました。また、映画を観てくださる方たちのイマジネーションとも合わさって、それらの行間も楽しめる作品でもあります。私はこの作品に関われて、本当に良かったと感じています」。
取材・文/山崎伸子