『TENET テネット』が世界興収2億5000万ドルを突破!勢いを取り戻す中国市場が後押しに
日本でも先週末についに公開を迎えたクリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』(公開中)。公開から3週目を迎えた北米では週末3日間で前週比約70%の470万ドルを売り上げ、興収ランキングV3を達成。確たるライバル作品不在の状態がしばらく続くため、この連続1位記録は上乗せされていくことになるだろう。しかし低調な数字が示すように、期待されていたような北米の映画館完全復活はまだまだ遠くなるとの見方は、日に日に増すばかりだ。
そんな『TENET テネット』だが、全世界興収ではコンスタントに数字を積み上げ、すでに2億5000万ドルを突破している。なかでも北米累積興収の3610万ドルを大きく上回る6060万ドルを売り上げている中国が、その後押しとなっているようだ。
ところがその中国での興行推移を見ると、ひと目で世界のほかの国々と大きく異なる部分に気付くことになるだろう。日本をはじめ主要市場の国々ではどこも『TENET テネット』が興収ランキング初登場1位スタートを切っているのだが、中国では一度も1位に輝いていないのである。
中国国内で『TENET テネット』を封じ込めるほどの驚異的なメガヒットを記録しているのは、第二次上海事変における最後の戦いとして知られる“四行倉庫の戦い”を圧倒的なスケールで描きだした中国映画『The Eight Hundred』。
昨年の上海国際映画祭でオープニング作品として上映されたのち、“技術的問題”によって公開が見送られていた同作は、新型コロナが沈静化した8月下旬に約1年越しの公開を迎えるや、3週連続で中国内で興収ナンバーワンを記録。4週目には『ムーラン』(ディズニープラスにて会員プレミアアクセスで独占配信中)に1位の座を譲るものの、5週目となるこの週末で再び1位に返り咲いた。
さらに同作は全世界興収4億2500万ドルを突破し、これまで首位だった『バッドボーイズ フォー・ライフ』(20)を上回り、今年世界中で公開されたすべての作品でナンバーワンのヒット作品に。注目すべきは、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドでもすでに公開されているにもかかわらず、この4億2500万ドルのほぼすべてが中国国内の成績だということ。
昨年も自国の作品である『ナタ〜魔童降臨〜』(19)と『流転の地球』(19)が国内だけで約7億ドルの興収を記録し、全世界年間興収ランキングで上位にランクインしたように、近年アメリカに次ぐ巨大な市場となっている中国。
すでに今年の中国の年間累積興収は11億ドルを突破しており、北米の約19億ドルに猛追。今年は極めて特殊な年とはいえ、映画館再開後も伸び悩みを続けている北米を上回る可能性が示唆されているほどだ。
文/久保田 和馬