オンラインとリアルでの映画祭開催、それぞれの課題やメリットを映画祭主催者と考える【映画祭座談会・後編】
映画を観る楽しさや、新たな才能を発見する喜びを共有できる“映画祭”。新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、各映画祭も開催にあたってあらゆる変化を求められることとなった。そんななか、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)は、会場に観客を迎える“リアル”と“オンライン”のどちらも活用する形で開催。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭はオンライン開催、東京国際映画祭は基本的にリアルでの開催を決定。様々にアイデアをしぼり、映画祭を実施する。そこでMOVIE WALKER PRESSでは、ぴあフィルムフェスティバルディレクターの荒木啓子、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭プログラミングディレクターの長谷川敏行、東京国際映画祭プロモーショングループ グループマネージャーの菊地裕介による、映画祭座談会を敢行。後編では、オンラインとリアル、それぞれの課題やメリットについて語り合ってもらった。
「作り手にも、“スクリーンでお客様と一緒に映画を観る”という体験をしてほしい」(荒木)
ーー第42回ぴあフィルムフェスティバル (9月12日〜26日開催)は、会場に観客を迎えた形で開幕しました。リアル開催を目指した想いを教えてください。
荒木「もし感染者が出た場合、そこで映画祭を止めなければならない。その心配やリスクを抱えながら開催をするというストレスは、実は根深く、私たちのなかに残っています。とにかくスタッフ一丸となって、徹底的に対策をして、お客様を迎えたいと思っています。オンラインのみでの開催にした方が、精神的には楽かもしれません。対策には経費もかかりますから、普通に考えたら、(リアルで)やらないほうが賢いのかもしれない。それでも私たちは、お客様を迎えた形で開催をしたかった。作り手にも、“スクリーンでお客様と一緒に映画を観る”という体験をしてほしいんです。とはいえ、オンラインで開催して成功をした映画祭もたくさんありますので、オンライン開催を否定する気はまったくありません。PFFの役割として、“スクリーンで上映する”という決断をしたということ。どちらがいい、悪いということではないと思っています」
「オンラインでのQ&Aなど、観客と作り手がライブでつながれるような場を設けたい」(長谷川)
ーー第17回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭(9月26日から10月4日開催)はオンラインでの開催となります。
長谷川「荒木さんがおっしゃったように、“映画はスクリーンで”という気持ちはもちろん持っています。特に我々のホールは高画質での上映ができる条件が揃っていますので、お客様だけでなく、監督たちにも、その環境で映画を体験してほしい。いまでも、環境が整えばリアルで開催したかったという気持ちもあります。映画祭で特に重要なのは、クリエイターや審査員、観客との交流の機会があるということ。オンラインでの開催を決断するにあたって、それができなくなるのではという葛藤もありました。ですので、オンラインでのQ&Aなど、観客と作り手がライブでつながれるような場を設けたいと思っています。」
「今年は、“映画本編は映画館でご覧いただく”をある種のメッセージとして掲げていきたい」(菊地)
ーー第33回東京国際映画祭(10月31日〜11月9日開催)は、リアルでの開催となります。オンラインを活用する予定はありますか?
菊地「東京国際映画祭の考え方としては、映画本編に関しては、オンラインでは一切ご覧いただけないということ。“映画本編は映画館でご覧いただく”ことを前提に、また今年は、それをある種のメッセージとして掲げていきたいと思っています。ただコロナ以降の世界では、配信ストリーミングが日常に溶け込んできていますので、それは決して無視することはできません。オンラインには海外とも簡単につなぐことができるメリットがありますので、Q&Aやティーチインなどにおいては、どんどん活用していきたいと思っています。劇場だとキャパシティの問題がありますが、オンラインだとたくさんの方に届けられるという利点もありますので、うまく使い分けて、実施していきたいと思っています」
■第42回ぴあフィルムフェスティバル
9月12日~9月26日で開催
「PFFアワード2020」入選作品全17本を10/31(土)まで期間限定で配信!!
【配信プラットフォーム】
・DOKUSO映画館
https://dokuso.co.jp/lp/pff2020
・uP!!!
https://bit.ly/3jOrkhR
■第33回東京国際映画祭
10/31(土)~11/9(月)で開催
公式サイト:https://2020.tiff-jp.net/ja/
⽇本で唯⼀の国際映画製作者連盟公認の国際映画祭。1985年に始まり、いまや最も熱気溢れるアジア映画の最⼤級の拠点となった東京に世界中から優れた映画、映画⼈、映画ファンが集まり、新たな才能とその感動に出会い交流する場を提供しています。