“家”で観ると、映画はもっとおもしろい!美術監督、磯見俊裕が語る『望み』邸宅へのこだわり
「何か角度がつけられるほうが視覚的に良いということでロフトベッドに」
2階にある、息子の規士(岡田健史)と娘の雅(清原果耶)、それぞれの子ども部屋も印象的だ。「芝居の流れとして、階段を上がっていって、まず息子の部屋があり、その奥に娘の部屋があるという設定。息子の部屋は、ベッドや机の位置にいる彼の目線で入り口を撮影できるように、窓側の壁がはずせるようになっています。インテリアの色は、みんなで『彼はどの色が好きかな?』と議論して、明るい青と緑を選びました。また、装飾のスタッフさんたちとも相談しながら、彼がサッカーをやっていたことが感じられる小道具も飾っています」
一方、雅の部屋にはロフトベッドが置かれている。「彼女が泣いているシーンがあるのですが、ただベッドを床に置いて、そこで泣いているというより、何か角度がつけられるほうが視覚的に良いということで、ロフトベッドにしました。インテリアの色は、いわゆる女の子っぽいピンクや黄色では、彼女のキャラクターに合わないということで、明るい黄緑になっています」と説明するように、どちらの部屋もキャラクターの個性が感じられるインテリアが置かれたのと同時に、撮影的な要望を踏まえた上での空間になっているのだ。
「堤監督には、カメラマンを自由に動かせたいという気持ちがある」
本作のように、現実の建築物だけではなく、映画のセットも使用するメリットの一つに、俳優やカメラがスムーズに動けるように設計できる、ということがある。「特に『人魚の眠る家』でも一緒だった撮影の相馬大輔さんは、カメラをどんどん移動させて、人間を捉えるのが得意なカメラマンなんですね。だから堤監督には、彼を自由に動かせたいという気持ちがある。(『望み』では)リビングに仕切りを作らなかったり、ダイニングの椅子に背もたれのないベンチを選んだりしたほか、いろんな所をちょっとずつ広く設計しています」
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磯見が語る『パラサイト 半地下の家族』に登場する“家”の魅力
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