“家”で観ると、映画はもっとおもしろい!美術監督、磯見俊裕が語る『望み』邸宅へのこだわり
「僕たちの仕事は“場”を作ること。スクリーンに映らなくても、役者さんの目には映っている」
人物像をふくらませるために、脚本を読み込むことはもちろんだが、磯見が何よりも尊重するのは、やはり「どういう人間として描きたいのかという監督の意向」である。「監督との会話の中で『この人物はけっこう雑な人間なんだ』という話がポロッと出たら、その人の部屋はゴミのあり方とかも含めて、雑な感じに飾ります。そうすることで、役者さんが部屋に入った時、自分はこういう人間なんだと感じることができるのです」
『望み』は物語の設定上、家のシーンが非常に多い作品だが、通常、映画の美術がスクリーンに映るのは「全体の2割くらい」だと磯見は言う。
「美術スタッフはみんな『2割映れば御の字だ』という感じで、臨んでいるんです。一方、多くの場合、役者さんはカメラに向かって芝居をしますよね。ということは、役者さんの目には、カメラの後ろにある景色が映っているわけです。そこで感じたものを、きっと役者さんは芝居に反映させていくだろうと。僕たちの仕事は“場”を作ること。たとえスクリーンに映らなくても、役者さんの目には映っている。だから、そこは手を抜かないようにと、みんなでよく話しています。いい芝居の先にはいい美術があるぞ、と思って、作品を観てもらえたらうれしいですね」
取材・文/石塚圭子
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