北村匠海が見つめる、“ブレイク後”の自分「限りなく一般人でいたい」
「なぜか、失敗して苦しいと思った時に限って評価される」
劇中で山本舞香演じるヒロインの服部苑子が、挫折しそうになったアゲ太郎に「初めは誰でも失敗するよ」と、激励するシーンがある。北村は過去にどんなつまずきがあり、そこからどう気持ちを持ち直してきたのだろうか。
北村は「僕は、メンタルを無理やり上げたりしないというか、ただ流れに身を任せる感じです。これまでに失敗もたくさんあったし、例えば『キミスイ』で泣く芝居も台本どおりにできなかったので、あとから監督に謝ったんです」と告白。
その芝居とは、北村の出世作『君の膵臓をたべたい』(17)で、北村が号泣するシーンのことだ。北村は「台本には、『泣いてもいいですか?』と言った瞬間、涙が出るとありましたが、言ってる途中からあふれ出てしまいました。でも、あとからそれが良かったと言われたんです。僕はなぜか失敗して、自分が苦しいと思った時に限って評価されることが多くて」と述懐。
さらに北村は、「ミュージックステーション」で「猫〜THE FIRST TAKE Ver.〜」を初披露した時、歌詞を詰まらせながらも熱唱したことも例に出し「失敗をバネに変えるというのではなく、“苦しんでる時のほうが輝いてみえる説”というのがあるようです」と複雑な思いを口にする。
北村は本作のあとも、主演映画『さくら』(11月13日公開)や、過酷な肉体改造をしてボクサー役を演じた『アンダードッグ』(11月27日公開)が公開待機中だ。北村は「ありがたいことに、いろいろな方が『ブレイクした』と言ってくださるんですが、僕自身は実感がないんです。他人事というか…」と意外な感想を述べ「きっと僕は、限りなく“一般人”でいたいんです」とも言う。
「なかなか難しいことではありますが。環境が人を変えてしまうことは多いので、あぐらをかかないようにしたい。とにかく自分が嫌いな人間になりたくないと心掛けてはいます」
インタビューでは毎度、どんな質問に対しても丁寧かつ誠実に答えてくれる北村。そのまっすぐさがファンのみならずスタッフをも惹きつけ、いまの大活躍につながっているのだろう。この秋は『とんかつDJアゲ太郎』を皮切りに、ぜひ“北村匠海三昧”といきたい。
取材・文/山崎伸子