ジャンル映画の鬼才・藤井秀剛が新作『超擬態人間』に込めたカルト・ホラー愛

インタビュー

ジャンル映画の鬼才・藤井秀剛が新作『超擬態人間』に込めたカルト・ホラー愛

不穏なオープニングから心を鷲掴みにされる!
不穏なオープニングから心を鷲掴みにされる!2018[c]POP CO.,LTD

「悪魔のディズニーランドだという感想も(笑)」

超擬態人間』の冒頭は、切れたチェーンを腕に巻いた少年が全裸で廃線を歩いているシーン――だが事の始まりは、その前日に。舞台となるのは森の中。そこでなぜか目覚めた親子が血に飢えた“ナマハゲ”に襲われ、かたや結婚式場の下見にやって来て、森の片隅に潜む古民家へと迷い込んだ一行にも魔の手が。少年時代であった80年代、ビデオ黎明期の頃に浴びるように観た様々なホラーが原体験になったと言う。

「片っ端から何でも観ましたねえ〜。なかでも僕の血肉となったのは、セリフに頼らず“映像と音響”のみで物語を語ることのできる巨匠アルフレッド・ヒッチコックやブライアン・デ・パルマなんですけど、B級に括られてしまう映画も大好きです。『超擬態人間』には、脱出に成功した男が底なし沼にはまってズボズボと埋まっちゃうシークエンスがあるのですが、あれは僕が子供の頃、テレビでよくやっていたリチャード・クレンナ主演、ガス・トリコニス監督の『新・悪魔の棲む家』(78)の影響ですね。その他いろいろなアメリカン・ホラーへのオマージュがあるので、海外では『超擬態人間』は“悪魔のディズニーランドだ”という感想もありました(笑)」

児童虐待がテーマ
児童虐待がテーマ2018[c]POP CO.,LTD

メインの舞台となった「深い森」は、選ぶべくして選び、監督、脚本、編集のほかに撮影も担当。自らカメラを回しながら演出を施していった。

「人間をどこか抑圧するような“閉所空間”に対する偏愛があるんですね。それとこれは、インディペンデント作品ですから予算的な制約もあり、“森”でのロケは過酷で厳しいけれども、ワンシチュエーションで見せ切るというのはクリエイターとしても腕の見せどころなわけで、スタッフ、キャストの頑張りによって画的な充実度が得られるんです。撮影は本来ならば演出に集中するため、本職の方にお任せしたいのですが、中途半端な人がやるのであれば自分で回そうかと。実はアメリカでの大学時代、『CBS News』からスカウトされまして撮影には自信があるんですよ。ただし最近、香港映画、ジョシー・ホー主演の『怨泊~On Paku~』(公開未定)で、岡本喜八組のキャメラマンとして有名な加藤雄大さんにお願いしたらさすがに素晴らしく、惚れ惚れしました」

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