脚本はつらいけど編集は楽しい!?『ビューティフルドリーマー』本広克行&小川紗良が語る映画作りの苦楽

インタビュー

脚本はつらいけど編集は楽しい!?『ビューティフルドリーマー』本広克行&小川紗良が語る映画作りの苦楽

原案は押井守による「夢みる人」
原案は押井守による「夢みる人」[c]2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会

「予算内に収まらないぞと思ったんですが、押井さんは『大丈夫、いける』って(笑)」

──ちなみに、原案の押井さんからなにか要望みたいなものは…?

本広「原案を読んで、まず思ったのが『予算内で収まらないぞ』と。でも、押井さんは『大丈夫、いける』って(笑)。いや、どう計算しても難しいので、軽音楽部だった設定を映研に差し替えて、撮れるところまで撮ろうというメタ方向に振ったんですよ。そうすれば、続編とかスピンオフみたいな展開も可能になる。実は、プロデューサーのリコ(藤谷理子)が不在だった期間のストーリーは、すでに台本ができていたりするんです。シネマラボはまさしく映画実験室なので、いろいろ試せるんですよ」

小川「この映画の登場人物たちのキャラの濃さと振り幅の広さだったら、いくらでもスピンオフがつくれそうな気がしますね」

本広「紗良ちゃんが今後もっと売れっ子になって、このバジェットの映画に出るのは難しいとなった時は、(斎藤)工くんのポジションで出てもらうので。そこまで僕の中では構想ができています(笑)」

──そうやって、どんどん構想を自由に広げていけるのが、この「シネマラボ」のおもしろさでもありますよね。

小川「この『ビューティフルドリーマー』だけでも、いろいろな人がいるので、いくらでも広げていける気がします」

──カメラマンのカミオ(神尾楓珠)や助監督兼雑用係のモリタ(森田甘路)のストーリーもおもしろそうですね。

撮影を担当するカミオ役の神尾楓珠
撮影を担当するカミオ役の神尾楓珠[c]2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会

本広「いろいろと可能性が広がるような座組を意識したところがありますし、脇を固めてくれた役者さんたちも融通がきく人というか…ムチャ振りをしても大丈夫な方々にお願いしていて。升(毅)さんには、かなりのムチャ振りをしちゃいましたけど(笑)」

──あの長ゼリフは確かにムチャ振りだなと思いました(笑)。

本広「長い上にめちゃくちゃ難しいっていう。升さん、1回では言えなくて落ち込んで帰っていかれましたから…。結果、編集でつないだんですけど、『いつかリベンジさせてくれ!』と言ってました。見ていて、大変だと思ったでしょ?」

小川「正直、どうなることかと思っちゃいました(笑)」

本広「あれは押井さんが昔考えたセリフを抜き出してきて、升さんには『これを全部暗記してください』『えっ、いまから⁉』っていう感じでお願いして。それも長年一緒につくってきた仲間だからこそ、というところでもあるんです。ふだん、映画をつくっているとしんどかったり、翌日の天気のことが気になったりするんですけど、今回は雨が降ろうと雪が降ろうとなにがあっても撮る、というのが決まっていた現場だったので、とにかく楽しくやろう、と(笑)。でも、振り返ってみると良い企画だったなあと思います。起承転結があって計算しながら撮っていくんじゃなくて、突発的なアイデアも採りいれていって。紗良ちゃんとも現場で話したけど、オンリー録り(声だけを撮ること)の後に昼食に行って、サラだけ違う衣装が帰ってきて。その時、レールが見切れているんだけど、淡々とサラが本を読み始める一連のシーンで、どこまで展開させていったらいいかなと思って、紗良ちゃんに原稿を書いてもらったんですよ」

升毅は、とんでもない超絶長台詞を披露!
升毅は、とんでもない超絶長台詞を披露![c]2020 映画「ビューティフルドリーマー」製作委員会

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