脚本はつらいけど編集は楽しい!?『ビューティフルドリーマー』本広克行&小川紗良が語る映画作りの苦楽
「大林宣彦監督は『映画(↗↘→)』っておっしゃるんです」
小川「そうなんです、あのシーンは現場で急に追加になって。私もどう入っていったらいいか最初わからなくて、自分でオンリー録り用のナレーション原稿を書いたんです」
本広「そうそう、“私は映画という夢を見ていたにすぎないのだろうか?”というナレーションのセリフを聞いた時に、大林宣彦監督が『えいが』のイントネーションにこだわっていらっしゃったことを思い出したんだよね。僕らは平坦に『映画(→→→)』と言いますけど、大林監督は『映画(↗↘→)』っておっしゃるんです。で、反射的に『紗良ちゃんはどう言ってる?』っていうことが気になっちゃって。そんな中で、スタッフが『あの〜、レールが見切れてるんですけど、いいんですかね…?』って言ってきて。『いいんだよ、あれは狙いだから』って返しながら、『映画』のイントネーションを確認するっていう。そうやって細かいところを考えながらつくっていけたというのも、僕は楽しかったですね」
──その言葉ひとつのニュアンスの違いだけで、シーンの意味合いも変わってきたりしますよね。
本広「そうなんですよ。大林監督じゃないですけど、映画ってそういう一つひとつのこだわりが大事だなって思いました。ただ、スケジュール的にはかなり怒涛だった…よね?」
小川「わりと毎日同じことを繰り返していた覚えがあるんですよね。基本的には映研の部室にいて、同じメンバーとずっと一緒にいるというシーンが多かったので(笑)」
──となると、秋元才加さんや池田純矢さんが時々来ると良いアクセントになっていたのではないか、と。
小川「秋元さんが撮影にいらっしゃった時、私たち映研のメンバー間の距離がすごく近かったのをご覧になって、『いいなあ』とおっしゃっていたのが印象に残っています」
本広「秋元さんは、あの役にピッタリだったなあ。あとね、滑舌がすごくいい」
小川「私も思いました。滑舌がきれいでいらっしゃるなあって」
本広「秋元さんが出てくるシーンで、モリタがずっと納豆をグチャグチャ混ぜてたじゃない?」
──1万回混ぜると“かにみそ”になる、っていうヤツですね(笑)。
本広「それ!この間、深夜のバラエティー番組を見ていたら、まさしく『納豆を1万回混ぜると味が不味くなる』っていうのを、やっていて。そしたら、食の評論家の方が『かにみその匂いがします』って言うんですよ。『あれっ、森田…オイッ⁉』って思わずテレビに言っちゃいました。あれはアドリブだったはずなのに、もしかして森田はネタとして知ってたのかなって(笑)」
小川「知ってたんじゃないですか(笑)」
本広「ホントに〜?」
小川「森田さん、ヘンな知識をいっぱい持っているんですよ。アドリブに、その知識が出ていた気がします。森田さんとシエリ(ヒロシエリ)は特に口が元々達者だから、出てくるワードがおもしろすぎて、私たちも笑いをこらえながら芝居をする、みたいなところがありました(笑)」
本広「なんだっけ、ただの黒いTシャツのことを『プレミアムブラック』とか言ってて。あれ、おかしかったなあ(笑)」
小川「あれもシエリのアドリブです。もう、みんな笑いをこらえるのが大変で…でも、その空気が良かったのかなとも思います」