脚本はつらいけど編集は楽しい!?『ビューティフルドリーマー』本広克行&小川紗良が語る映画作りの苦楽
「『ブレードランナー』の話をしていて、“ああ、壁が迫ってくるヤツね!”って」
──いわゆる“口立て(撮影当日に内容を伝えて、役者たちが即興で芝居をしていく手法)”での芝居を撮っていく、というスタイルだったからこそ生まれたものでもあったのでしょうか?
本広「口立てと言っても、僕はキーワードをポンッと言っただけなんですよ。“ここは『椿三十郎』を入れてみようか”とか“ここでクロサワ(黒澤明)について語ろう!”といった感じで。口立てというと、つか(こうへい)さんを連想しますけど、細やかな内容やセリフをその場でワーッと伝えて、それを役者がつかんでグワーッとしゃべる“つかこうへい”スタイルには到底およばないものでしたから…。でも、演出家であるからには、いつか本当の口立てにも挑戦してみたいですね」
──なるほど。役者さん側からすると、1つのキーワードでも芝居をふくらませやすい、といったような感覚はありますか…?
小川「ふくらませるというか…今回はエチュードで芝居をしている中に、本広さんがポンッとキーワードを入れてくる、という感じだったので、『どうしよう、どうしよう!?』って考えながら発展させていく感じだったんです(笑)」
本広「時々、本番中にも思いついたらいきなりブッ込むようなこともしていて。『エクソシスト』っていう単語に反応して、『(ウィリアム・)フリードキンのほうな!』って言ってみたり(笑)。そんな感じで、その場その場でいろいろと要素を足しているんです。だから、段取りやリハーサルの段階からすでにカメラを回して、会話の中味を全部映画で例えさせる“映画好きあるある”みたいな感じにもなっていて。そういえば、秋元さんもアドリブ入れてたよね?」
小川「ありました。“中打ち(上げ)”のシーンで」
本広「『ブレードランナー』の話をしていて、“ああ、壁が迫ってくるヤツね!”って。それは『メイズランナー』ですから(笑)。あれは僕の指示でもなんでもなくて、秋元さんが咄嗟に入れてくれたんです」
──いわば、映画大喜利みたいな感じになっていますよね。
本広「映画好きの集まりである映研では、そういう現象がたびたび起きますよね。ちょっとワンシーンを真似てみるとか」