黒沢清監督がジャ・ジャンクー作品を深掘り!「日本と中国の関係についての映画を撮ってみたい」
「若い人たちが映画というものに情熱を持って押しかけてくることがうらやましい」(黒沢清)
市山「このトークをご覧になってるから質問が届いているのですが、黒沢監督は中国で撮影してみたいと思いますか?」
黒沢「中国は何度か行ったことがありますが、こんな施設が残ってるんだとびっくりしているとすぐ横に近代的なビルが建っていたり、とてもおもしろい場所で惹かれますね。こういう場所で映画を撮ったらおもしろいだろうなと素直に感じたりはしますが、ただジャ・ジャンクーが先行していろいろ撮っていますから、僕が独自に中国でなにを撮るのかは考え込んでしまいますね。いますぐやりたいものは言えませんけど、でも日本と中国の関係についての映画を撮ってみたいな。何年か前に、日本と中国を舞台にした『1905』という作品を撮ろうとして、途中で中断してしまったことがありました」
市山「もうひとつ。ジャ・ジャンクー監督は山西省で平遥国際映画祭という映画祭を創設しましたが、黒沢監督は映画祭の運営には興味はないのでしょうかと」
黒沢「映画祭というものには興味がありますし大好きなので、参加する時はいつも心が踊るのですが、運営となりますと…市山さんを見ていると大変だなと。自分が選んだ好きな映画がたくさん上映されているにもかかわらず、その上映の場よりもゲストの到着とか大変なことに追われて、とても運営には携われないなというのが本音ですね。逆にジャンクー監督は映画祭を立ち上げて、若手の育成のためなど理由はあるのでしょうが、どのような経緯でそんな大変なことをはじめたのでしょうか?」
市山「発端はわからないのですが、中国では外国映画の輸入制限や検閲がある関係で、ヨーロッパ映画やアート映画を観る機会が非常に限られています。それらを中国の人に観せなきゃいけない、映画を志す人たちに学んでもらいたいと考えているのではないかと思います。実際に行ってみると、北京や上海からわざわざ観にきた若い人がたくさんいて、すごい熱量を感じるんです。その渇望感が映画祭を始めた理由なのでしょう」
黒沢「なるほどなと思いつつ、うらやましいですね。若い人たちが映画というものに情熱を持って押しかけてくる。韓国の釜山に行っても感じますね。本当に若い人たちが、若い人が好きそうな映画を観ているのではなく、映画そのものが好きで、これまで観たことのないような映画がここに来れば見れると真剣に集まっている。本当にうらやましいことです」
取材・文/久保田 和馬