のん「喜びでいっぱいです!」『私をくいとめて』東京国際映画祭で観客賞を受賞
第33回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが11月9日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、のんがヒロインを演じた大九明子監督作『私をくいとめて』(12月18日公開)が観客の投票によって決定する「TOKYOプレミア2020」部門の「観客賞」を受賞。のんが「何年ぶりかの主演映画で、大九監督に呼んでいただいて、この映画に参加させていただき、本当に、本当に心から喜びでいっぱいです」と輝くような笑顔を見せ、今後の公開に向けて「一緒に頑張りましょう!」とお茶目にコメント。会場を温かな空気で包み込んだ。
『勝手にふるえてろ』(17)の原作者、綿矢りさと監督の大九明子が再びタッグを組んだ本作。おひとりさまの生活に慣れきり、脳内に相談役「A」が誕生した31歳のみつ子(のん)が、年下男子に恋をして、そんな自分に戸惑いながらも一歩前に進もうとする姿を描く。
観客から選ばれた賞とあって、「うれしく思います」と感無量の面持ちを見せたのん。「映画というものは、観客の方々に観ていただいて初めて完成するもの。この賞も大切に受け止めたい」としみじみ。「観ていただいた皆さんと一緒にこの映画を盛り上げて、頑張っていきたい。ぜひぜひ、おもしろいなと思った方はSNSや口コミなど、お友だち、ご家族にオススメしていただけたらうれしいです。この賞をありがたくちょうだいして、一緒に頑張りましょう!」と呼びかけて、会場の笑いを誘っていた。
大九監督は、コロナ禍において映画館に足を運んでくれた観客に感謝し「お一人お一人の貴重な一票が私共にこの賞をくださった。いつも以上に感慨ひとしおです」と感激しきり。また共演者の林遣都と橋本愛からはコメントが届き、「細部に散りばめられた監督やスタッフの皆さんの強いこだわり、情熱が多くの人に届いたんだなと思うとうれしい気持ちでいっぱいです」(林)、「楽しんでいただけたことが心からうれしいです。大九監督とのんさんに本当におめでとうって言いたいです」(橋本)と祝福。大九監督、のんもうれしそうな笑顔を浮かべていた。
またクロージング作品『HOKUSAI』(2021年公開)からは、柳楽優弥、田中泯、河原れん、橋本一監督が登壇。本作は、「冨嶽三十六景」などで知られ、“10世紀最大のアーティスト”と評される浮世絵師・葛飾北斎の生涯を、独自の視点と解釈をもとに描く物語。享年90歳という長寿人生を送った北斎の青年期を柳楽、老年期を田中が演じている。
柳楽は「世界的に有名な日本人のアーティストを時代劇で演じるのは、初めて。とてもやりがいのある、最高な時間を過ごせました」と充実感たっぷり。2020年について「大きな転換期」と語り、「そのなかでも(本作が)何かを目指す情熱みたいなものを維持する、追い風になってくれたらいいなと思います」とコメント。「日本映画が大好きなので、負けずに盛り上げていきたい。これから頑張ります!」と熱い意気込みを明かしていた。
コロナ禍において、映画の未来への希望の光を灯すべく、映画館での上映を基本として感染対策をとりながら開催された今年の東京国際映画祭。これまでにあった「コンペティション」、アジアの新鋭監督を集めた「アジアの未来」、日本映画の気鋭作品が揃う「日本映画スプラッシュ」の3部門を、新作のショーケース部門として「TOKYOプレミア2020」と題して一つに統合。様々な賞を競うのではなく、上映される全作品を対象に観客の投票によって決定する「観客賞」が設けられた。
取材・文/成田おり枝