ストップモーションとは思えない圧巻の映像表現を生みだすアニメスタジオ、ライカとは?
デジタル、CGアニメ全盛のこの時代に、手描きでもなく、ストップモーションアニメという手法にこだわりを持ち、良作を連発しているアニメーションスタジオ、ライカ。最新作『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』が公開中の同スタジオについて紹介していきたい。
あのナイキとも関わりが深い!?意外な成り立ち
このライカの重要人物として名前を挙げたいのが、同社のCEOを務めるトラヴィス・ナイト。「トランスフォーマー」シリーズのスピンオフ作品『バンブルビー』(18)で監督を務め、実写映画でも手腕を発揮したことが記憶に新しい彼は、アニメーター、プロデューサー、そして『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(16)では監督として、ライカ作品すべてに携わってきた男だ。
彼はライカの成り立ちに大きく関わっている。というのも、もともとライカの前身で短編やCMの制作を担っていたウィル・ヴィントン・スタジオが、90年代により規模の大きい作品を作るために投資を求めたのが、スポーツブランドであるナイキの創設者フィリップ・ナイトで、その息子がトラヴィスなのだ。もともとChilly Teeという名でラッパー活動をするも大成しなかったトラヴィスは、父が投資をしたウィル・ヴィントン・スタジオでアニメーターとしてのキャリアをスタートさせていくことになる。
そしてその後、財政的に振るわなかったスタジオをフィリップが買い取り、2005年に名前をライカと変更。『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』(93)などのヘンリー・セリックをアドバイザーに呼ぶなどして体制を整えると、記念すべき第1作目となる『コララインとボタンの魔女』を2009年に発表する。クオリティの高さでいきなりアニー賞3部門受賞を果たすと、賞レースに絡む良作を連発するスタジオとして認識されるようになった。
最新の技術を投入したネクストレベルのストップモーション
そんなライカの最大の特徴が、ストップモーションアニメにこだわっているという点だ。技術があまり発達していなかった時代に重宝された歴史あるこの手法は、人形を1コマ1コマ少しずつ動かしながら撮影しなければいけないため、手間も製作費も段違い。熟練したアニメーターが必要だったりと、現在では使用されることが少なくなっている技法だ。
しかし、前身スタジオのウィル・ヴィントンの意思を継ぎ、生き生きとした独特の表現を生むことができるストップモーションにこだわり続けるライカ。さらにそれだけにとどまらず、創設以来、3Dプリンタやモーションキャプチャ、ライブアクションリファレンスなど、あらゆるテクノロジーを積極的に導入している。
ストップモーションアニメ史上初となる3D作品となった『コララインとボタンの魔女』では、様々な顔のパーツを付け替える「リプレイスメントシステム」というアイディアを開発し、何十万通りという膨大な数の表情を作りだすことに成功。革新的な試みによって、それまで実現が不可能だったような大規模な作品を生みだしているのだ。
「僕たちはストップモーションを約100年間束縛してきた限界に興味がない」と、『ミッシング・リンク~』の監督クリス・バトラーが語るように、最古の特殊技術に最新の技術を組み合わせてきたライカは、2016年にアカデミー科学技術賞を受賞している。