「FGO」未プレイでも楽しめる!『劇場版 Fate/Grand Order』の魅力を解説
物語の軸は、“円卓の騎士”の存在とその目的
「FGO」第6の特異点の物語『劇場版 FGO キャメロット』の舞台は、1273年のエルサレム。史実では最後の大規模な十字軍遠征が行われた時代なのだが、先述の歴史介入により周辺は少しずつ荒廃、消滅の危機に直面した民たちは逃げ場を失い疲弊している。そして、改変されたエルサレム周辺は大きく“3つの勢力”が対峙しながら、各々にこの局面と向き合っていた。
まず1つ目の勢力は、“円卓の騎士”たち。かの「アーサー王伝説」に登場するガウェイン、ランスロット、モードレッド、トリスタン、アグラヴェインといった精鋭たちが“獅子王”と呼ばれる統率者の下、エルサレムに堅固な城壁と城門に囲まれた聖都を形成、その都市内で限られた人々を庇護している。5~6世紀のブリテンの王由来の英雄たちが、なぜ異国を支配しているのか?その真相追求こそが本作の肝であり、主人公ベディヴィエールの目的にも連なる。
ベディヴィエールも“円卓の騎士”の一人で、アーサー王の死を看取ったとされる騎士。聖都を治める円卓の騎士たちとは一線を画し、世界を彷徨い続けてきた彼は聖都へ向かう途中、21世紀からレイシフト(時間旅行の一種)してきたカルデアのマスター(魔術師)の藤丸立香、藤丸を守護するマシュ、サーヴァントのレオナルド・ダ・ヴィンチと出会い行動を共にする。
ちなみに“サーヴァント”とは、歴史に名を刻んだ人物や物語・伝説上の存在を高度な魔術により召喚した英霊で、各々が人智を超越したスキルや”宝具”を駆使できる。マシュは人為的に英雄の力をその身に宿した“デミ・サーヴァント”と呼ばれる存在なのだが、彼女に力を貸す英雄が何者なのかはいまのところ不明である。
前編は、三つ巴の勢力を彷徨う展開へ
ベディヴィエールたちが目指す聖都は、”聖抜”と呼ばれる救済の儀式の際にのみ扉が開かれる。彼らは砂漠の中の2つ目の勢力”エジプト領”へ向かう。といっても、こちらも十字軍の時代のエジプトではなく、介入の影響で紀元前14~13世紀より領地ごとこの世界へ召喚された“全盛期の古代エジプト”である。
巨大なピラミッドに座する統治者オジマンディアスは“太陽王”と称され、魔術を駆使する女王ニトクリスを従え、さらに食客として、この世界を彷徨うキャスター(魔術師)で「西遊記」の法師のモデルとなった玄奘三蔵を迎え入れていた。聖都よりも民に開放的な陣営であるが、その条件は王への服従。そして豊かなように見えても都市周辺は世界が消失し始め、滅亡の危機に瀕していることは変わりなく、獅子王の勢力とは膠着状態にある。
さらにベディヴィエールとカルデアの面々は第3の勢力“山の民”の隠れ里へたどり着く。ここは当時、中東で暗躍した暗殺者集団の勢力。暗殺者集団…といっても、聖都へたどり着けず、住む場所を失った民を護りながら“円卓の騎士たち”への叛逆の機会をうかがう義賊的な立ち位置である。“山の民”には呪腕のハサン、静謐のハサンと呼ばれるアサシン(暗殺者)のほか、この時代へ召喚された古代ペルシャの伝説の射手(アーチャー)、アーラシュが組している。ほかにもハサンたちが畏れ崇める存在の影がチラホラ…。
物語の前編は、この三つ巴の状況から歴史を修復する糸口を探る展開となる。そもそもこの時代を特異点と化した“聖杯”は誰の手に託されているのか?獅子王はなぜエルサレムに聖都を築いたのか?そしてベディヴィエールはどんな目的で長い旅を続けているのか?ここまでに記したサーヴァント、英雄たち一人一人のドラマにも寄り添いながら、後編での怒濤の展開を予感させる壮大なる"if"な歴史スペクタクルが繰り広げられる。悲壮な運命に抗い希望を切り拓く、美しくも儚いキャラクターたちの競演を、大河ドラマを楽しむような感覚で、まずは気軽に鑑賞してみてもらいたい。
文/大場徹
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