妻夫木聡がのび太役で感じた、家族にあふれる“愛”「自分が父親になるなんて、思ってもみなかった」
「おばあちゃん役の宮本さんの声が、すばらしすぎました」(妻夫木)
――今回の脚本で工夫された点や、描きたかったポイントとは?
山崎「まずは『おばあちゃんのおもいで』を入れられる喜びが一番大きくて、そこからのび太の結婚式と絡めた話にすれば、前作ともつなぐことができるなと考えました。今回描くのは、野比家のサーガです。時系列がシャッフルされているけど、のび太が生まれ、そのひとり息子が結婚する前での話となっています」
――おばあちゃんの初登場シーンで、ゆっくりと歩いてくるしぐさが印象的でした。
八木「実は、漫画でもおばあちゃんが通り過ぎるシーンは2コマかけてじっくりと描いてあったんです。年をとると関節が下がり、その重みでガニ股になってしまうそうで、あの体勢にしました。着物を着ているので大股に歩けないから、すり足的に少しずつ進む感じです」
妻夫木「本当に遅いのに、観ているほうはその間を待てるんです」
八木「そうですね。観ている側も、のび太と同じ気持ちになれると思います」
――宮本信子さんが声優を務めたおばあちゃんがとても味わい深かったです。
妻夫木「宮本さんの声は、すばらしすぎました。のび太が未来から来たことも本当に信じてくれているんだなと、説得力を感じました」
――のび太とおばあちゃん、のび太とパパ、のび太としずかちゃんが、それぞれ手をつなぐシーンでは、胸にぐっと迫るものがありました。
妻夫木「僕自身も、おばあちゃんの思い出と言えば、手の感覚なんです。おばあちゃんとは、田舎に帰るたびに手をつないだり、肩を貸したりしていたので。おばあちゃんがぎゅっと強く握る感じや、手をつないだ時のしわしわな感じは、いまでも残っています。きっとおばあちゃんはあの瞬間に、自分の想いを僕に伝えようとしていたのかなと。
いまでも覚えていますが、ある日、おばあちゃんが車を降りる際に親父と2人で同時に手を差し出したことがあって。そしたら、おばあちゃんが親父の手を振り払い、僕の手を取ったんです(苦笑)」
山崎「おばあちゃん、振りはらうことはないのにね(笑)。お父さんショックだったんじゃないの?」
妻夫木「親父は無言でしたが、ちょっとおもしろかったです(笑)。やっぱり孫っていうのは特別な存在なのかなと思いました」