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『ティファニーで朝食を』に怒り心頭?個性強すぎな文豪、トルーマン・カポーティの栄光と転落

コラム

『ティファニーで朝食を』に怒り心頭?個性強すぎな文豪、トルーマン・カポーティの栄光と転落

「冷血」で新境地を開拓するも最後の長編に…

1966年には「冷血」を6年の歳月をかけて発表し、ノンフィクション・ノベルという新たなジャンルを切り拓いた。実際に発生した殺人事件を取材し、加害者を含む関係者へのインタビューを通して、事件発生から犯人の逮捕、その死刑執行に至るまでを再現する内容で、カポーティ自身がジャンル名を名付けた。加害者との交流を通してカポーティは、自分と同じような悲しい境遇に育ったことに同情し、“少しでも長く生きていてほしい”と“作品を発表するため、早く死刑が執行されてほしい”と相反する感情が芽生えたという。それらの苦悩は冒頭の『カポーティ』でも描かれており、作品がのちに映画化されるなど大きな成功を収めるが、本作以降は短編のみで長編を完成させることができなかった。

「冷血」を最後に長編を完成させることができなかった
「冷血」を最後に長編を完成させることができなかった[c] 2019, Hatch House Media Ltd.

社交界から追放され、作家人生からも転落…

作家デビューからメディアで注目を集め、トークショーやパーティーにも引っ張りだこで、上流階級や国際社会の著名人との華やかな交流関係を築いてきたカポーティ。特に有名なのは、「冷血」発表後に彼が主催として行った仮面舞踏会「黒と白の舞踏会」で、ハリウッドスターから政治家まで時代を代表するセレブリティ540名が集まったという。ニューヨークの社交界で存在感を発揮した彼は、当時のCBS会長の妻ベイブ・ペイリーやジャクリーン・ケネディの妹リー・ラジヴィルら上品で美しさと知性にあふれた女性たちとの交流を深め、親しみを込めて彼女たちを“白鳥(スワン)”と呼んでいた。

ニューヨークの社交界を席巻したカポーティ
ニューヨークの社交界を席巻したカポーティ[c] 2019, Hatch House Media Ltd.

しかし、“白鳥”たちを題材にした次回作「叶えられた祈り」の執筆に取りかかったことで、カポーティは社交界から追放され、作家人生からも転落するきっかけになってしまう。上流階級の退廃的な真実を綴ろうとした彼は、1975年に作品の一部を出版する。しかし、その行為は友人たちの下品なゴシップを世間に明らかにすることだった。これが災いし、自殺する者が現れ、何組もの結婚が破綻になるなど、たちまち白鳥たちは彼を遠ざけるようになり、激しい論争を巻き起こしてしまう。その結果、作品が完成することはなく、多くの友人を失ったカポーティはドラッグやアルコールに溺れ、苦しみの中でこの世を去ることになったのだ。

上品で美しく、知性のある女性との親交を深めた
上品で美しく、知性のある女性との親交を深めた[c] 2019, Hatch House Media Ltd.

作家や俳優など、交流のあった多くの関係者への貴重な過去の取材テープや新たなインタビュー、アーカイブ映像を交えて、謎に包まれたカポーティの素顔に迫る『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』。「誰もが一度は会いたいと願うが、一度会えば二度と会いたくない」と称される、彼の強烈な個性をその目で確かめてほしい。

文/平尾嘉浩

■『ティファニーで朝食を』
Blu-ray 発売中
価格:1,886 円+税
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

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