役所広司主演『すばらしき世界』、心を震わす予告解禁
直木賞作家、佐木隆三原作の「身分帳」を原案に、舞台を約35年後の現代に置き換え、『永い言い訳』(16)の西川美和監督が映画化した『すばらしき世界』(2021年2月11日公開)。このたび、本作のポスタービジュアルと予告編が解禁となった。
西川監督が初めて実在の人物をモデルとした小説を基に、徹底した取材を通じて脚本と映画化に挑んだ本作。社会のなかで一度レールを外れても懸命にやり直そうとする元殺人犯の三上正夫を、本作で第56回シカゴ国際映画祭の最優秀演技賞を受賞した役所広司が演じ、三上を追うテレビマンの津乃田を仲野太賀、テレビプロデューサーの吉澤を長澤まさみが演じている。
予告編では、雪が降り積もる重い鉄の扉から三上が「今度ばかりは堅気ぞ」と意気込みながら出所するシーンで幕を開ける。人生の大半を刑務所で過ごし、13年ぶりの社会復帰は思うように運ばず悪戦苦闘する三上の存在を知った津乃田と吉澤がテレビ番組のネタにしようと彼に近づくなか、三上はサラリーマンに絡むチンピラを見かねて暴力で叩きのめしてしまう。
津乃田は「何で闘ってぶちのめすしか策がないと思うんですか。そこが変わらない限り、あなたは社会じゃ生きていけない」と三上に諭すが、「お前らみたいな卑怯な人間になるくらいなら、死んでけっこうたい!」と怒号を浴びせる三上。喜怒哀楽の振れ幅が大きく人間味あふれる三上の様々な一面、事ある毎に社会のシステムに弾き出される彼の“普通の人間”への険しい道のりがおかしくも切なく映しだされていく。
またポスタービジュアルには、「この世界は生きづらく、あたたかい」というキャッチコピーが添えられ、美しい花越しに写った役所のこちらを見つめる眼差しと光の加減がなんとも印象的なビジュアルに。人生のレールを踏み外した男が見た、新たな世界とは?現代社会の問題点をえぐり、いまの時代は“すばらしき世界”なのかを観る者に突きつける西川監督の力作に期待が高まる。
文/富塚沙羅