「正直、リサーチなんてほぼやらない」“親切なロシア料理店”オーナーを演じる名優ビル・ナイの俳優観とは?
長年にわたって演技派として活躍し、ハリウッド大作にも印象的な役柄で出演し続ける英国俳優、ビル・ナイ。彼の気品とユーモアにあふれた魅力を堪能できるのが、人と人とのつながりを描く群像劇『ニューヨーク 親切なロシア料理店』(公開中)だ。その飾らない人柄を、本作のインタビュー映像を交えながら紹介したい。
ハリウッド大作でも活躍する英国の演技派俳優
1949年、イングランド生まれのナイは現在71歳。元々はジャーナリストや小説家を志していたが、その道を断念し、演劇の道へ。舞台俳優としてキャリアをスタートさせたのち、リチャード・カーティス監督の『ラブ・アクチュアリー』(03)で老いたロックシンガーを演じ、第57回英国アカデミー賞助演男優賞など多くの映画賞を獲得。その後も「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのデイヴィ・ジョーンズ役や、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』(10)での魔法大臣ルーファス・スクリムジョール役のほか、『名探偵ピカチュウ』(19)といった数多くのメジャー作品へ活躍の幅を広げてきた。カーティス監督の『アバウト・タイム 愛おしい時間について』(13)でも、タイムトラベルを繰り返して人生に奮闘する息子を見守る父親役を好演。そのやさしい眼差しや言葉の温かさに勇気づけられたという人も多いかもしれない。
個性的なロシア料理店オーナー役にどこか和んでしまう
『ニューヨーク 親切なロシア料理店』は、ニューヨークのマンハッタンに、ある理由で2人の息子とともに無一文で逃げてきたクララという母親が、経営が傾きかけている老舗ロシア料理店に集う様々なバックグラウンドを持つ人々と巡り会う物語。ナイは登場人物たちをつなぐロシア料理店のオーナー、ティモフェイ役で出演している。
移民だった祖父が開業した創業100年を超える名店を引き継いだものの、商才がなく、すっかり店は古びてしまい、「サービスが悪い」「料理もひどい」と言われてしまうありさま…。しかし、ティモフェイ自身にはあまり危機感はなく、店内でピアノを弾いたり、読書をしたり、仲の良い常連客が来店すれば接客しながら談笑するなど、ひょうひょうとした雰囲気を漂わせている。
「うちの自信作はキャビアだけだ。缶詰だから失敗がない」と平然と発言し、新たに雇ったマネージャーに「厨房に入るのは遠慮してくれ」と言われた時には、「すまない」とすぐに引き下がるなど、少しも偉そうな素振りを見せない。また、「訛りがあるほうが客にウケると思って…」とニューヨーク育ちにもかかわらず、表向きはロシア系訛りを装うなど、ちょっとズレたところも。彼を演じるナイの存在感もあって、観ている方も彼が登場するとどこか安心感を抱いてしまうはず。