各国映画祭からサイン会、完全リモート撮影の作品まで…映画界で採用された「オンライン手法」
2020年、世界中に大きな影響を与えた新型コロナウイルスの流行。この困難の時代を乗り越えるために人々は工夫を凝らし、働き方をはじめライフスタイルを大きく変化させていった。会議や打ち合わせなど仕事でのシーンから飲み会といった娯楽まで、テクノロジーを駆使することで対面から非対面に変わっていくことが当たり前に。このリモート/オンラインのスタイルは、映画界でも大きな存在感を発揮した。
映画産業の活性化の一端を担う?映画祭で見いだされた意義とは
感染が急激に広まっていった当初、世界各地の劇場が閉鎖され、日本では上映中断を余儀なくされた『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』が期間を限定して動画配信に移行するという動きも。そんななか、どのような形で実施するのか決断を強いられたものの一つが映画祭だ。
世界三大映画祭のなかで、最初に判断を迫られることになったカンヌ国際映画祭。毎年5月にフランスで開催されているカンヌ国際映画祭と言えば、過去にはNetflixと対立するなど、劇場での上映を熱烈に支持していることでも有名だ。2020年も期間を延期しての通常開催を目指していたが断念し、選出されていた作品に「カンヌ2020」というラベルを付け、連携する各国の映画祭で上映するという形に落ち着いた。
その一方、マーケット部門に関しては、6月22日から26日にかけてオンラインでの上映を実施。世界各地のどこからでもアクセスできるということは大きなメリットとなり、いままでカンヌの地に出向くことができなかった小規模なプロダクションや関係者たちがマーケットに参加するという現象も起きたそうで、映画産業の活性化への希望の光を見いだした。
アジアを代表する10月の釜山国際映画祭もまたアイデアを駆使することで、使用座席の稼働率が同映画祭史上最高の92%を記録する成功を収めた。まず、チケットを完全にデジタル化することで人同士の接触を防止。韓国ではもともとチケットレスが進んでいたため、これは問題なく受け入れられたという。さらに好評だったのが、全135回行われた舞台挨拶のうち90回がオンラインでも実施されたこと。その際、チャット欄を観客に開放したことで誰でも気軽に質問や意見を述べることができ、結果、映画に関する議論がこれまで以上に盛んなものになったそうだ。
また、タイなど作品を製作した国の劇場でも映画を同時に公開し、舞台挨拶まで観られるようにするという国境を越えた試みや、舞台挨拶同様、オンラインでフォーラムの映像を閉幕後も期間限定で観られるようにしておくなど、感染対策としてだけではない意義を見いだした。