どうなる2021年アカデミー賞!ゲーム・チェンジが予想される作品賞候補まとめ
例年の2月下旬開催から、4月25日へと日程を変更した第93回アカデミー賞授賞式。それに伴い、作品賞を含む有資格映画のルールも変更されている。通常であれば、当該年内にロサンゼルス、ニューヨークの2都市で継続した7日間以上の有料劇場公開が前提となっていたが、コロナ禍で主要大都市の映画館が閉鎖している現状を踏まえ、2月28日までにVOD(オンライン上映)で上映された作品も可能となっている。この新ルールが裁定された当時は、「劇場営業が再開するまでの暫定措置」とされていた。しかし、2020年が終わりに差し掛かるなかで本原稿を執筆しているいま現在も、ロサンゼルスやニューヨークの映画館が営業再開する目処は立っていない。
これはなにを意味するのだろうか?2019年度開催の第91回アカデミー賞では、Netflixが製作したアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA /ローマ』(18)がモノクロ映画として、外国語映画として、そしてストリーミング企業による製作として初の作品賞受賞となるか?が注目の的となった。2020年(本原稿執筆時からわずか10か月前のことである!)の第92回授賞式では、全編韓国語の『パラサイト 半地下の家族』(19)が、作品賞だけでなく、ポン・ジュノ監督の監督賞と脚本賞、そして国際長編映画賞の4冠を受賞する、史上初の快挙となった。今年は、とうとう配信系映画が堂々とアカデミー賞のノミネート資格を得ることになる。
Box Office Mojoによると、2020年に米国の劇場で公開されていた映画は447本(2020年12月25日現在)。平均興行成績は約460万ドル(約4億7千万円)で、2020年1月17日(日本公開は2020年1月31日)に公開されたウィル・スミス主演の『バッドボーイズ フォー・ライフ』(20)が興行収入第1位。2019年度は911本の映画が公開され、平均興行収入は1246万ドル(約12億8千万円)、興行収入第1位は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)だった。単純計算でも公開本数が半減、興行収入は1/3という状況のなか、どんな作品がアカデミー賞を手にするのだろうか?
2020年は、1月のサンダンス映画祭、2月のベルリン国際映画祭以降のメジャー映画祭はほぼオンライン開催となり、アカデミー賞の前哨戦と言われる9月のトロント国際映画祭もオンラインとドライブイン上映を併用するハイブリッド開催となった。他方、同じく9月のヴェネチア国際映画祭、10月の東京国際映画祭は厳重な安全対策を取ったうえで、現地開催されている。
現在作品賞候補のフロントランナーとされているクロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』(3月26日公開)は、ヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞、トロント国際映画祭の観客賞を受賞した史上初の映画となった。『ノマドランド』は、作品賞のほかにもクロエ・ジャオの監督賞、フランシス・マクドーマンドの主演女優賞、ジョシュア・ジェームズ・リチャーズの撮影賞のノミネートが期待されている。
トロント国際映画祭でプレミア上映された『Ammonite』(20)は、ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンが共演し、1840年代の英国で運命的な出会いをする2人の女性の物語。『燃ゆる女の肖像』を米国配給したNEONが手がけ、同作と同様に美しい映像で2人の想いを綴っていく。トーマス・ヴィンターベア監督の『Another Round(英題)』は、デンマークの国際長編映画賞候補作品であり、マッツ・ミケルセンが主演したアルコール中毒者の物語で、笑いとシニカルさの配合が素晴らしい。メキシコのマイケル・フランコ監督の『New Order(英題)』も、現代のメキシコ・シティを舞台に持てる者と持たざる者の軋轢、そして独裁政治を描く意欲的な作品。