【今週の☆☆☆】圧巻のゾンビアクション『新感染半島』、ポッチャリ刑事が東京で大暴れする『燃えよデブゴン』など、年始に観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、2021年の幕開けを飾る1月1日公開の3本をピックアップ。“アフター・パンデミック“を描いた韓国の大ヒット作、香港映画界の至宝ドニー・イェン主演のカンフー・アクション、異物を呑み込む女性が主人公のスリラーのラインナップ!
「面白ければ何でもあり」の心意気が嬉しい痛快作!…『新感染半島 ファイナル・ステージ』(公開中)
ゾンビの爆発的流行をスリリングに描いて絶賛された『新感染 ファイナル・エクスプレス』から4年、崩壊した韓国を舞台にした“その後の物語”。亡命先の香港でくすぶっていた元軍人のジョンソクは、祖国に放置されたままの大金を持ち帰る裏仕事を請け負うが…。登場人物を一新した今作は、感染が広まる街からの脱出劇から、生きる屍であふれる世界でのサバイバルにシフトした。ゾンビとの死闘に加え、狂気のリーダー率いる民兵隊と過激なカーバトルを展開するなど、終末系ジャンルのあらゆる要素を満載。モダンゾンビのキモである「本当に怖いのは人間」もしっかり押さえられている。ジョンソクがかつて見捨てた母娘と再会するなど、韓国映画らしい熱き人間ドラマも見ごたえあり。荒っぽい展開を含め「面白ければ何でもあり」という心意気が嬉しい痛快作だ。(映画ライター・神武団四郎)
東京を舞台に太ったドニー・イェンのカンフーが炸裂!…『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』(公開中)
「動けるデブ」としてジャッキー・チェンと共にガンフー映画で脚光を浴びたアクション俳優サモ・ハン・キンポーの代表作である『燃えよデブゴン』が、40年の時を超えて現代版にリブート! 『イップ・マン』シリーズで脚光を浴びたドニー・イェンを主演に迎え、特殊メイクで「デブ化」させることで、「動ける最強のデブ」を実現。
敏腕刑事のフクロン(ドニー・イェン)は、事件を追うのに熱くなり、フィアンセから婚約を破棄され、やり過ぎた逮捕劇を行い、現場から外されてしまう。その結果、体重は増加しすっかりおデブな体型に。そんな中、容疑者護送任務を命じられたフクロンは日本へ。そこで、彼はヤクザと警察組織が癒着が絡む大規模な事件へと巻き込まれてしまうのだった。
旧作同様にブルース・リーへのリスペクトを捧げつつ、コメディ要素が融合したアクションが展開。狭い地域に建物が密集した新宿・歌舞伎町を再現したセットや築地市場や東京タワーなど、日本独自の特殊な場所を舞台とした、ドニー・イェンのキレのあるカンフーアクションは必見だ。コメディ要素とアクションを織り交ぜ、明るく楽しいタッチの作風に仕上がっているので、新年早々テンションを上げたい&気分をスッキリさせたいアクション映画好きにはオススメの1本となっている。(映画ライター・石井誠)
奇妙な欲望に目覚めていく女性の孤独と反乱…『Swallow/スワロウ』(公開中)
題名の『Swallow』とは“のみ込む”という意味。大富豪の御曹司と結婚し、誰もが羨む暮らしを手に入れた若く美しいヒロインが、ある日、衝動的にガラス玉をのみ込んだことをきっかけに、奇妙な欲望に目覚めていくという物語だ。金属片などの危険な異物を次々とのみ込もうとする主人公の姿を恐ろしくも官能的に描く本作は、あらゆる観客が言葉を失うであろう衝撃作だが、決してただのゲテモノ映画ではない。斬新なオリジナル脚本も手がけた新人のカーロ・ミラベラ=デイヴィス監督は、物質的には豊かだが、まったく心は満たされない主人公の空虚な日常を繊細かつリアルに映像化。彼女が人知れず内にため込んだ孤独感やストレスを、観る者に生々しく感じ取らせていく。やがて後半、主人公のさらなる予測不能の行動を通して、抑圧された女性の反乱、解放というテーマも浮き上がらせていくこの映画、驚愕のエンディングの光景がしばし脳裏にこびりついて離れない。(ライター・高橋諭治)
2021年の映画初めに、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼