稀代の映画ファン、オバマ元大統領が選ぶ映画&ドラマシリーズを総ざらい!今年はなにを選んでる?
毎年、年末になると今年のトップ10リストが公開されるが、オバマ元大統領がホワイトハウス時代から続けているリストを楽しみにしている人も多いと思う。
2009年に「サマー・リーディング・リスト」として、夏休みをマサチューセッツ州のマーサズ・ヴィニヤードで過ごす際に「持っていく本」を挙げたのが最初で、2016年には「サマー・プレイリスト」と称し昼用、夜用がそれぞれSpotifyでアップされた。これは、大統領時代に「自分の心に響いた作品を振り返り、世界中の作家や芸術家にエールを送るための素敵な方法」として共有してきたもの。
本や音楽のリストに続き、2015年にはPeopleマガジンにオバマ元大統領、ミシェル夫人のお気に入り映画としてピクサーの『インサイド・ヘッド』(15)、マット・デイモン主演の『オデッセイ』(15)、ドラマではスティーブン・ソダーバーグ監督のHBOドラマ「The Knick /ザ・ニック」とABCドラマ「ブラキッシュ」を挙げている。
2018年にはSNSを通じて、「大統領時代から気に入っていた伝統を用いて、書籍、音楽、映画を通じて1年を振り返る」リストを公開している。2018年のリストには、『ブラック・クランズマン』(18)や『ブラックパンサー』(18)といった作品に混じり、是枝裕和監督の『万引き家族』(18)、イ・チャンドン監督の『バーニング 劇場版』(18)といった作品も含まれている。
2019年は、政界引退後に立ち上げた映像製作会社Higher Groundが共同配給を手掛けたNetflixのドキュメンタリー『アメリカン・ファクトリー』を始め、日本でもヒットしたA24製作の『フェアウェル』(19)、『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(19)、アンナプルナ製作の『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(19)、そしてポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(19)、ジャ・ジャンクー監督の『帰れない二人』(18)と、シネフィル顔負けのリストになっている。
今年のリストは、映画に加えてドラマシリーズのリストも公開。オバマ元大統領の「映画好き、ドラマ好き」が色濃く現れるリストとなっている。
映画のリストにはアカデミー賞作品賞の前評判が高い『ノマドランド』(19)、ピクサーの新作アニメーション『ソウルフル・ワールド』(20)、Higher GroundのNetflixドキュメンタリー『ハンディキャップ・キャンプ: 障がい者運動の夜明け』(20)、デヴィッド・フィンチャー監督のNetflix映画『Mank/マンク』(20)や、同じくNetflixの『マ・レイニーのブラックボトム』(20)など。
ドラマシリーズには「ベター・コール・ソウル」や「クイーンズ・ギャンビッド」、そしてHBOの「I May Destroy You」などが入っている。
特筆すべきは、映画のリストに入っている『バクラウ 地図から消された村』(公開中)とドラマの「ザ・ボーイズ」。『バクラウ 地図から消された村』はブラジルの新鋭クレベール・メンドンサ・フィリオ監督のスプラッタSF?というべき意欲作で、カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞しているとはいえ、この作品まで抑えているオバマ元大統領はタダの映画好きではない。『バクラウ 地図から消された村』の米国公開は今年3月。新型コロナウイルスのパンデミックが始まり、映画館が閉鎖された直後にオンライン上映サイトのKino Marqueeで公開された。
Kino Marqueeで映画のチケットを購入すると、提携映画館から好きな映画館を選ぶことができ、料金の半額が映画館へ支払われる仕組み。このシステムを使えば、オバマ元大統領のリストに入っているようなアート系、インディペンデント系の作品を上映する地元の映画館を支援することができる。現在もアメリカの映画館は約35%が限定された収容率で営業しているに過ぎず、シネコンを含む映画館ビジネスの存続が重大な問題となっている。いままでのリストからもオバマ元大統領の映画好きは疑いようがなく、「映画館支援として『バクラウ 地図から消された村』を観たら(意外と)おもしろかった」のが理由ではないかと思う。
「ザ・ボーイズ」に関しては、クリエイターのセス・ローゲンとエリック・クリプキが最も驚いていたようだ。
「オバマ大統領が、10フィートのペニスで殺されるシーンがある俺たちのドラマを観て楽しんだことを知ってアガった!」とつぶやくセス・ローゲンに対し、「この厳しい1年の中で、本当に素晴らしい瞬間です。@バラク・オバマ、とても光栄です」とエリック・クリプキも驚きを露わに。
年末年始には、オバマ元大統領のリストを辿ってみるのもいいかもしれない。