イライジャ・ウッドのホラー愛が爆発!我が道を行く製作会社として注目のスペクターヴィジョンを知っているか?
ロバート・デ・ニーロをはじめ、ブラッド・ピット、シャーリーズ・セロン、最近ではエマ・ストーンなど、ハリウッドで活躍する俳優たちには役者として成功を収めたのち、自らの製作プロダクションを立ち上げ、プロデュース業に乗りだす人も多い。
自らの出演作はもちろん、ブラピの「プランBエンターテインメント」であれば社会派、セス・ローゲンの「ポイント・グレイ・ピクチャーズ」ならコメディといった具合に、それぞれのカラーが出た作品を手がけることも多々。そんな俳優たちによる製作会社の中でも独自の路線を貫き、近年大きな注目を集めているのが、イライジャ・ウッドの「スペクターヴィジョン」だ。
役者としてのキャリアも独特なイライジャ・ウッド
もともと子役として『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(89)でキャリアをスタートさせると、2001〜03年の『ロード・オブ・ザ・リング』三部作で主人公のフロドを演じ、脚光を浴びたウッド。俳優としてさらなる名声を求めるのかと思いきや、大作とは距離を置き、過激なホラーなど自らの好みに合わせた作品に次々と出演していく。
ロバート・ロドリゲスとフランク・ミラーによる『シン・シティ』(05)には、食人趣味を持つ静かな猟奇殺人鬼ケヴィン役で出演。手足をちょん切られて狼に喰われるという最期でも表情一つ変えないという特殊なキャラクターを不気味に演じて見せた。
さらに、1980年の同名スプラッター映画をリメイクした『マニアック』(12)では、夜な夜な街に繰りだしては女性を殺害し、その頭皮をマネキンに被せるというド変態な異常者を演じるという好き者ぶりを発揮。気づけば一癖も二癖もあるフィルモグラフィーを築くことになった。
ホラー愛があふれまくり!スペクターヴィジョンの奇抜な作品たち
そんなウッドが、ジョシュ・C・ウォーラー、ダニエル・ノアとともに2010年に立ち上げたのが、映画(とゲームの)製作会社「スペクターヴィジョン」だ。この自らのプロダクションでウッドは、初めて手がけた映画『Toad Road』(12)から現在まで、ほとんどホラー、たまにSFやブラックコメディといった具合に、偏りまくったジャンル映画愛を発揮してきた。
どれもインディペンデントな作品であるため、作り手の想いが詰め込まれた尖ったものが多いのも特徴で、たとえば、ウッド自ら主演を務めた『ゾンビスクール!』(14)では、学校を舞台にゾンビ化した子どもに先生たちが襲われるという攻めた題材をチョイス。コミカルなテイストで綴られたが、残虐描写はとことんグロテスクで、さらに『ザ・チャイルド』(70)など様々な映画へのオマージュが持ち込まれるなど、こだわりとゾンビ映画愛が感じられる作品に仕上げられた。
ウッドが、2016年の『ダーティー・コップ』(この作品をはじめ、ウッドは自らの出演作にプロダクションを関与させないことも多く、ホラーへの強いこだわりを感じさせる)で共演したニコラス・ケイジを口説き落としたアクションホラー『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(17)では、愛する妻がカルト集団に理不尽に殺された男の復讐劇を、赤を基調としたサイケデリックで地獄のような映像とともに表現。暴力描写は容赦ないが、それでいてどこか幻想的という不思議なバランスで男の狂気をスクリーンに描きだした。
その翌年には、再びケイジを主演に据え、H・P・ラヴクラフトの傑作「宇宙からの色」を映像化したSFホラー『カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇』(19)を製作。宇宙からの謎の飛来物によってもたらされる得体の知れない恐怖を、これまた悪夢のようなサイケデリックな映像と秀逸なクリーチャー造形で、ハイテンションかつカオスに描きだし、観客を未知の世界へと誘った。
そもそもの題材をチョイスするセンスの良さに加え、その世界観を予想だにしないような映像で見事に表現する確かな手腕を持つスペクターヴィジョン。いい意味で期待を裏切り、型にはまらない作品を生みだしてくれる、ガチで信頼できる会社なのだ。
Blu-ray 発売中
価格:4,800円+税
発売・販売元:株式会社ファインフィルムズ