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「美少女戦士セーラームーン」担当編集・おさBUが振り返る、武内直子とファンと共に歩んだ道のり

インタビュー

「美少女戦士セーラームーン」担当編集・おさBUが振り返る、武内直子とファンと共に歩んだ道のり

「かつて“夢”を届けたみなさんと共にものづくりが出来ているのは、とても嬉しいことです」

放送5年間におよんだアニメシリーズは、「美少女戦士セーラームーンセーラースターズ」をもって幕を下ろした
放送5年間におよんだアニメシリーズは、「美少女戦士セーラームーンセーラースターズ」をもって幕を下ろした[c]武内直子・PNP・東映アニメーション


その後も人気が続くなか、1997年には惜しまれつつ「なかよし」での連載とテレビアニメの放送が終了。小佐野も武内の担当を離れ、「美少女戦士セーラームーン」は“過去の人気作”になっていくかと思われた。
しかし、新たな作品やグッズを求めるファンの声は年々増していき、連載終了から15年の時を経た2012年には「美少女戦士セーラームーン20周年プロジェクト」が始動。小佐野もあらためて中心的な役割を担うことになる。
「2010年頃、武内先生から『おさBU、またセーラームーンを動かしてよ』ということを言われまして、やるからにはちゃんとやらなければいけないなと感じました。『20周年プロジェクト』が始まる前は僕自身もまったく別の仕事をしていたので、ファンの方がどの位いらっしゃるのかもわからなかったんです。終了から15年も経っていましたし、蓋を開けるまでは不安でした」。

結果、この不安は杞憂に終わったようだ。「おどろいたのが、“あの頃”の女の子たちがみんな大きくなってもセーラームーンを忘れずにいてくださったということ。 そして、みなさんの熱意が下がっていなかったというのは嬉しい誤算でしたね。『20周年プロジェクト』の関係者のなかにもたくさん、“あの頃”の女の子だった方がいらっしゃいまして。特にバンダイさんなど商品開発の方の熱意が凄くて、『子どもの頃買ってもらえなかった』、『友達は持ってたけど、私は持ってなかった』というある種の怨念とでもいうか(笑)、『青春を取り戻すぞ!』みたいな熱意によって水準を超えた物が仕上がってくるんです」。

華麗な変身アイテムの数々は、いまなお様々な形で商品化が続いている
華麗な変身アイテムの数々は、いまなお様々な形で商品化が続いている[c]武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会

「なかでも印象に残っているのは変身用のコンパクトをモチーフにしたコスメ(シャイニングムーンパウダー)です。このアイテムをきっかけに、バンダイさんで大人の女性向けの商品開発が始まったほどの原動力になりました。これまで少女漫画原作の作品で“オトナ女子”に向けた市場はなかったので、どんなお客さんを想定して、どんな商品展開をするのかを手探りで考えながらやっていくのは、90年代とは全然違うタイプの仕事ですごく楽しかったです。また、彼女たちのように、かつて僕らが“夢”を届けていたみなさんと共にものづくりが出来ているのは、とても嬉しいことですね」。

「25周年プロジェクト」を経て、いまなお様々な企画が展開されるなど普遍的な魅力を放つ、武内の描いたセーラー戦士たち。小佐野は、その普遍性が武内のもつ「色彩感覚」にあると指摘する。「武内先生は、とにかくカラーイラストがすばらしい。ほかの方にない独特の美しさがあるので、どうやって身につけられたのか僕も興味があります。ちなみに子ども時代から絵はお上手だったようですが、漫画を描き始めたのは遅くて、高校3年生の時だそうです。先生が描かれた色味を変えないよう、扉絵など着色をされた原稿は特に保存に気を遣っています。デジタル制作に移行されてからも、天才的な色彩感覚は変わっていませんね」。


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