「美少女戦士セーラームーン」担当編集・おさBUが振り返る、武内直子とファンと共に歩んだ道のり

インタビュー

「美少女戦士セーラームーン」担当編集・おさBUが振り返る、武内直子とファンと共に歩んだ道のり

「『セーラームーン』は、光の当たり方で輝き方が変わる、銀水晶のような作品」

2014年からは、原作に忠実な映像化を目指す「美少女戦士セーラームーンCrystal」がスタートした
2014年からは、原作に忠実な映像化を目指す「美少女戦士セーラームーンCrystal」がスタートした[c]武内直子・PNP・講談社・東映アニメーション


2014年には、今回の劇場版に繋がる新作アニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」が始まる。キャストやスタッフを一新し、あらためて原作の忠実な映像化を目指した本作の、製作に至った経緯を尋ねた。
「90年代アニメシリーズの難しかった部分として、連載とアニメが同時進行だったため、原作のとおりにアニメを完結させることが困難でした。特にシリーズの後半についてはラストが変わってしまったり、出せなかったキャラクターがいたり…。そのため、原作に準拠したアニメを作ろうということで『Crystal』がスタートしたんです」。

『劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」』の原作となったのは、“夢”を題材に、ちびうさの恋やセーラー戦士それぞれの夢が描かれ、ファンからも根強い人気を誇る「デッド・ムーン」編。原作の連載当時、どのような流れでこの物語が生みだされたのだろうか。

ちびうさを物語の中心に据え、いまなお根強い人気を誇る『美少女戦士セーラームーンSuperS』
ちびうさを物語の中心に据え、いまなお根強い人気を誇る『美少女戦士セーラームーンSuperS』[c]武内直子・PNP・東映アニメーション

「『美少女戦士セーラームーン』が長期的な作品になっていくことに伴い、新鮮さを保つために作品を新陳代謝させていこうと。そこで、“代替わり”としてちびうさを主役にしては?という意見がテレビ局や制作会社から挙がりました。実際、当時はちびうさがうさぎを追い越すほど人気があった。でもやっぱり主役を大事にしたいという思いもあり、ダブルヒロインにしよう!ということで2トップが活躍するお話になりました。テレビアニメの『SuperS』というタイトルも先生が決められました。S2つを大文字にすることで、スーパーセーラムーンとスーパーセーラーちびムーンが主人公だという意味を込められたんです。あとは先生が当時取り組みたいテーマとして“夢”を挙げておられたことと、それまでほかの戦士たちを深く描けていなかったことを気にされていたこともあり、“夢”を軸に各戦士たちを掘り下げていこう、ということでこのような構成になったんです」。

本作は原作に忠実でありながらも、キャラクターの関係性や変身シーンの演出など、90年代アニメシリーズを思い出させてくれる構成も随所にみられ、“あの頃”を知るファンにも嬉しい仕上がりとなった。小佐野もその出来映えには自信を見せる。

只野和子によるキャラクターデザインに、武内も称賛を惜しまない
只野和子によるキャラクターデザインに、武内も称賛を惜しまない[c]武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会

「『Crystal』3期から監督を担当されている今千秋さんは、武内先生の原作の精神をしっかり引き継いだうえで上手に作ってくださるので、原作ファンの方も納得のものに仕上がっていると思います。そして今回の劇場版では、90年代アニメシリーズのキャラクターデザインを担当された只野和子さんが奇跡的にカムバックしてくださいました。只野さんの描く今回のキャラクターデザインは原作と90年代アニメシリーズのちょうどいいとこ取り。この画には武内先生もすごく喜んでくれて、僕もそのサプライズニュースを先生に持っていく時には、すごくウキウキしました。原作ファンの方も、90年代アニメシリーズが好きな方も楽しめる、完成度の高いものになっていると思います」。

作品の誕生からまもなく30年を迎え、移り変わっていく時代のなかでも色あせない輝きを放つ「美少女戦士セーラームーン」。小佐野は本作の魅力を、「銀水晶のようだ」と表現する。
「『美少女戦士セーラームーン』には、時代とともに解釈が変わったり、20数年たったいまだからこそ気づかされたりすることがたくさんあるように思います。連載当時、男女雇用機会均等法が改正され、今後大人になっていく女の子たちに『これからは自分たちが社会に参加して、どんどん活躍できる時代が来るんだよ』という希望のメタファーとして作品が存在していたんだということも、後になって気づいたことでした。『美少女戦士セーラームーン』はその時代によって、光の当たり方で輝き方が変わるような、まさに銀水晶のような作品だと感じています。あとは当時のファンの世代にバトンタッチが行われていることかな。最近は特に、若い方が新たな風を入れてくださって大変助かっています。みんな僕よりもずっとセーラームーンのことがわかっているし(笑)。これからも、色々な人がそれぞれの光で照らしてくれることで、作品を進化させていってくれたら嬉しいですね」。

30年を迎え、ますます輝きを増していく「美少女戦士セーラームーン」から、今後も目が離せない!
30年を迎え、ますます輝きを増していく「美少女戦士セーラームーン」から、今後も目が離せない![c]武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会

取材・文/編集部


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