「とらドラ!」竹宮ゆゆこの衝撃作を完全映画化!『砕け散るところを見せてあげる』に見る竹宮ワールドの“神髄”
竹宮ワールドの醍醐味が詰まった「砕け散るところを見せてあげる」
それまでラブコメディのイメージが強かった竹宮作品の魅力といえば、思わず吹きだしてしまうような軽妙な会話のやりとりと、一見、エキセントリックなのに、いつしか愛さずにはいられなくなる主要キャラクターたちの造形の巧さにある。
特に、ひと癖もふた癖もあるヒロイン像は、一般的にイメージされる理想の女の子とは程遠いが、それゆえに目が離せない存在となってゆく。そんなヒロインに戸惑いつつも、最後まで全力で彼女の最大の応援者であろうとする主人公の男の子。そして、2人を温かく取り巻く、個性豊かな仲間たち。苦悩や葛藤を交えながら、若者たちの成長を共感度高く活写する本作は、竹宮作品の真骨頂ともいえる。
竹宮作品の魅力は“楽しいラブストーリー”というだけでは終わらないことだ。ライトな語り口であるからこそ描ける、親との関係や家庭の問題、自我への不安といった重厚なテーマと、それらに悩み苦しみ、満身創痍になりながらも、勇気を出して前に一歩踏みだそうとする登場人物たちの繊細な心理描写がファンの心をつかんできたのだ。ひと際高い評価を受けた「砕け散るところを見せてあげる」には、そうした竹宮ワールドの醍醐味ともいうべき要素がすべて詰まっている。
さらに、「砕け散るところを見せてあげる」は、竹宮が用意したプロット上のある“仕掛け”が話題を呼び、ライトノベル読者以外にも認知度を高めることに成功した。小説のネタバレになるため、ここで詳しく説明することは避けるが、現在と過去の時系列がさりげなくズレたり、“俺”という一人称はそのまま、語り手が切り替わったりすることで、初めに登場する“ヒーローになりたいという少年”について、読者は竹宮の思惑どおり、ミスリードにはめられてしまうのだ。
映画ならではの方法論で、作品のテーマに迫るSABU監督
有名原作の映画化作品では『蟹工船』(09)や『うさぎドロップ』(11)で知られるSABU監督が「砕け散るところを見せてあげる」を映画化するという発表があった際、原作ファンの間で最初に関心を集めたのは、この仕掛けを映像でどのように表現するのか!?という点だった。先に言ってしまうと、実はこのポイントについては、あえて“ミスリードを仕掛けない”ことを選択しており、映画ならではの方法論で、さらに作品のテーマへと深く迫っている。人物描写に長けたSABU監督自らが手掛けた脚本とキャストの演技、印象に残るシーンの積み重ねという王道のスタイルで、竹宮の物語が持つ本質的な魅力を丹念に表現することに徹し、細部まで作りこまれた映像美によって、原作の壮大な愛のメッセージを余すところなく伝えている。
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著/竹宮ゆゆこ、イラスト/ヤス
発刊元:電撃文庫(KADOKAWA)
■「ゴールデンタイム1春にしてブラックアウト」
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著/竹宮ゆゆこ、イラスト/駒都えーじ
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衝撃作に込められたメッセージを読み解く…『砕け散るところを見せてあげる』特集
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