「とらドラ!」竹宮ゆゆこの衝撃作を完全映画化!『砕け散るところを見せてあげる』に見る竹宮ワールドの“神髄”
青春ストーリーからサスペンス・スリラーへ…大胆な展開を見せるミステリー的構造
さて、前述したプロット以外にも、本作には驚きがいくつも詰め込まれているので、原作未読、映画未見の方の興を削がない範囲でご紹介していこう。
まずは冒頭シーン、2人の人物の会話に出てくる「つまり、UFOが撃ち落されたせいで死んだのは2人」という意味深な台詞。UFOってなに?死んだ2人とは?観る者に興味を抱かせたまま、ストーリーは一気に進んでいく。このように、序盤で謎を提示し、終盤で解き明かしていくというミステリー的な構造は、竹宮作品が読者の心をつかんで離さない特徴でもある。
もう一つは、物語の前半、後半、ラストで、別ジャンルかと思うほど、受ける印象がガラリと変わってしまう大胆なストーリー展開だ。主人公の清澄と玻璃が出会う前半部分は、いじめのシーンこそ重くつらいものの、全体的には2人の恋の始まりを感じさせる甘酸っぱい学園青春ストーリーとして楽しめる。それが物語のちょうど中盤、玻璃のいじめ問題が収束へ向かう兆しが見えた時から、それまでとはカラーの異なる不穏な空気が漂い始め、観る者を恐怖に陥れるサスペンス・スリラーに豹変。ラストに向けて、世代を超えた普遍的な愛の物語へと昇華されるのだ。
SABU監督の真骨頂!加速し続けるストーリー展開
物語が進むにつれて、どんどん加速していくような感覚はSABU監督作品の真骨頂であり、竹宮作品との相性は抜群。特に、たたみかけるようなクライマックスシーンは圧巻だ。
原作ではあくまで観念的なメタファーだった銀河をスクリーンいっぱいに映しだしたファンタジックな映像の美しさは、映画ならではの醍醐味を十分に味わえるもの。
また、本作が3回目の共演となる中川と石井をはじめ、若手キャスト陣が竹宮節ともいえる独特のコミカルなセリフを、生き生きとしたリアルな日常会話として、完全に自分のものにしているのも原作ファンにはうれしいポイントだろう。
あらゆる面から見て、原作を最高にリスペクトした映像化作品となっている映画『砕け散るところを見せてあげる』。原作ファンも、まだ原作を読んでいない人も、すべてを知ってから、また繰り返し観たくなるこの特別な愛の物語を、ぜひ劇場で堪能してほしい。
文/石塚圭子
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価格:510円+税
著/竹宮ゆゆこ、イラスト/ヤス
発刊元:電撃文庫(KADOKAWA)
■「ゴールデンタイム1春にしてブラックアウト」
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著/竹宮ゆゆこ、イラスト/駒都えーじ
発刊元:電撃文庫(KADOKAWA)
衝撃作に込められたメッセージを読み解く…『砕け散るところを見せてあげる』特集
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